巨額盗難のBybitが反撃開始、ラザルス撲滅へ追跡網を構築
大手暗号資産(仮想通貨)取引所「Bybit(バイビット)」は25日、北朝鮮のハッカー集団「Lazarus Group(ラザルス・グループ)」によって14億ドル相当の資金を盗まれたことを受け、業界初の懸賞金プラットフォーム「Lazarus Bounty(ラザルス・バウンティ)」の立ち上げを発表した。
ラザルス・バウンティでは、関係するウォレットアドレスや資金の流れをリアルタイムで公開し、ユーザーが不正資金を追跡できる。ユーザーは自身のウォレットを接続し、不正資金の流れを追跡する「バウンティハンター」として活動でき、資金凍結につながった場合、バウンティハンターには即時に報酬が支払われる。
さらに、資金凍結に貢献したすべての関係者には、報酬としてバウンティの5%が付与される。この対象には、取引所やミキサーも含まれる。これにより、業界全体での協力を促し、ラザルスの活動を抑制することを狙う。
加えて、プラットフォームには「善良なアクター」と「悪質なアクター」を分類するランキング機能も搭載されている。制裁対象の資金をどれだけ早く特定し、対処したかによってランキングが決定される仕組みだ。これにより、業界関係者が迅速に対応するインセンティブを高め、違法な資金の流通を防ぐ狙いがある。悪質なアクターと認定された場合、その記録が残るため、取引所や関連企業にとっては信用問題に直結する可能性がある。
また、ブロックチェーン分析企業「Chainalysis(チェイナリシス)」「Elliptic(エリプティック)」、ブロックチェーン分析プラットフォーム「Arkham(アーカム)」などといったブロックチェーン分析企業と連携し、リアルタイムでのウォレットアドレスの更新機能も提供する。
バイビットは、このプラットフォームの運用のために専任チームを設置し、継続的な監視と更新を行うと発表した。さらに、今後はラザルスによる他の被害者もこのプラットフォームにアクセスし、自らの資産追跡を行えるようにする予定だ。
また、今後のバージョン2では、新機能として「ウォレットのリアルタイム更新」が導入される。この機能により、最新のウォレット残高情報がリアルタイムで更新され、バウンティハンターは特定のウォレットを一定期間担当し、その資金移動を監視できる。また、規制当局向けのツールも開発される予定だ。
バイビットのCEOであるベン・チョウ氏は、「この取り組みは始まりに過ぎない。業界全体が協力し、ラザルスやその他の悪質なアクターを排除するまで、我々は決して止まらない」とコメントした。
ラザルス・グループの資金洗浄活動に対抗するためには、業界の協力が不可欠だ。バイビットの取り組みは、ブロックチェーン技術の透明性を活かし、不正資金の流通を防ぐ画期的な試みといえる。今後、このプロジェクトがどのように発展し、業界に影響を与えるのか注目が集まるだろう。
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