ビットコインは週末も下値圧力が継続し、土日ともに陰線をつけたが、月曜日になりやや反発し現在は9万ドル前後を推移している。そんな中、オンチェーンデータからは「市場全体の構造的変化」を示す動きが複数確認されている。
建玉の急減は「市場参加者のシフト」を示唆
オンチェーン分析アナリストのOn-Chain Mind氏は14日、自身のXにて「現在起きている深い調整により、市場参加者の質が変わりつつある」との分析を共有した。
短期的な価格変動や一時的なノイズを除外し、市場の本質を捉えるうえで有効なのがオープンインタレスト(建玉)の60日変化だ。この指標は、建玉の増減を60日スパンで平滑化することで、市場に流出入するレバレッジ資金の流れを明確に示す。
現在、60日変化はマイナス30%に達しており、これは今サイクル全体を通じて最も低い水準だ。言い換えれば、先物市場に積み上がっていたレバレッジの約3分の1が、わずか2カ月で消滅したことになる。
ただ、今回の大規模な建玉縮小は単純な弱気相場というよりも、市場参加者の入れ替わりを示している可能性が高い。つまり、短期的な値動きだけを追いかける投機的な投資家、通称”ツーリスト”の退場と同時に、リスク管理を重視する耐久力が高い資本の台頭を意味している。
結果的に現在の極端な建玉減少は「市場の健全化が進行している」兆候と位置づけた上で「次の大きな動きが生まれる余地が整いつつある」とOn-Chain Mind氏は締めくくった。
ホールコイナー流入が過去最低水準に
オンチェーン分析企業クリプトクオントのアナリストであるDarkfost氏は15日、自身のXにて「ホールコイナー(1 BTC以上の取引を行う投資家層)が明確に減少している」と指摘した。
ホールコイナーの動向は、ある程度まとまった資金を持つ投資家の意思決定を反映しやすく、現在の売り圧力や市場構造の変化を測るうえで有効な指標となる。
最新データによると、ホールコイナーによるバイナンスへのビットコイン流入は、過去数年と比べて明確に縮小。年平均では約6,500 BTCと、2018年以来の低水準を推移している。さらに週平均の流入量は約5,200 BTCと、今サイクル全体を通して最も低い水準だ。
この動きは、表面的には「一定の資金力を持つ投資家からの売り圧力が低下している」ことを示すが、より深い視点では「市場構造そのものが変化している兆候」とも解釈できる。
というのも、ここ数年で取引所の選択肢が増えたことに加え、DeFi(分散型金融)を含む多様な資産の保管・取引手段も整備されており、結果的にバイナンス以外の複数のプラットフォームへ資金が分散しているからだ。
このような状況を踏まえ、ホールコイナーの減少は「売り圧の低下だけではなく、市場の深い構造的変化を示唆している可能性が高い」とDarkfost氏は結論づけた。
金融市場全体の脆弱性を指摘する声も
一方、投資データ分析プラットフォーム、アルフラクタルの創業者兼CEOであるジョアン・ウェドソン氏は15日、自身のXにて現市場の脆弱性について注意を促した。
ウェドソン氏は、米国の鉱工業生産指数の成長が近年停滞している一方で、S&P500が何度も史上最高値を更新し続けている点を指摘。
現在の株式市場は本当に「実質的な経済成長」を価格に織り込んでいるのか、それとも潤沢な流動性、過剰な評価額、そして金融工学によって”押し上げられた数字”を追いかけているに過ぎないのか、と疑問を投げかけている。
流動性は短期的に価格を支える要因となるが、経済を持続させるのは生産活動そのものに他ならない。しかし現在の市場は、その二つが明確に切り離された状態にある。
この乖離が示すのは、表面的な繁栄の裏にある脆弱性だ。資産価格が実体経済の成長を伴わずに上昇する局面は「健全な繁栄ではなく、ショックに対して極めて弱い構造を意味する」とウェドソン氏は警鐘を鳴らしている。
オンチェーン活動から見ると、現在の軟調な地合いは「市場構造転換のプロセス」と捉えることもできる。金融市場全体の脆弱性にも注意を払いつつ、市場参加者にとっては次の動きを見極める重要な局面とも言えそうだ。
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