放棄資産を基金化、ビットコインは一般財源に使えず
米国アリゾナ州のケイティ・ホッブス知事が8日、ビットコインおよびその他のデジタル資産の準備金設立に関する内容を含む法案「HB 2749」に署名し、同法が成立した。この法律は、州内で放棄されたデジタル資産の取り扱いについて、州がその価値を管理・活用するための新たな枠組みを定めるものである。
これに先立ち、7日にはニューハンプシャー州でも、州財務長官による暗号資産(仮想通貨)への投資を可能にする法案(HB 302)が成立しており、アリゾナ州は、ビットコイン準備金に関連する法整備を行った米国の州として2例目となった。
アリゾナ州で成立した法案の主な目的は、デジタル資産が放棄されたとみなすための具体的なプロセスを確立することにある。新規定は、「所有者への連絡が配達不能として返送されてから3年後にデジタル資産は放棄されたものとみなされる」ことなどを定めたものだ。
Web3業界にとって本法案の意義が大きいのは、「Bitcoin and Digital Assets Reserve Fund(ビットコインおよびデジタル資産準備基金)」設立に関する内容が含まれているからである。これにより、アリゾナ州においてビットコイン準備金設立に関する枠組みが、初めて法的に定められたことになる。
本法案では、議会の承認を受けた場合に限り、州財務長官はこの基金に保持されているデジタル資産の最大10%を州の一般財源に預け入れることができるが、ビットコインの一般財源への預け入れは禁止されている。一般財源に移された資産は通常、州のさまざまな行政サービス(教育、インフラ、医療など)に使われることになるが、ビットコインだけは例外とされた形だ。これは、ビットコインを州の日常的な歳入としてすぐに使うのではなく、基金の中で実質的に「準備金」として保持し続けることを意図した構造であるとみられる。
ただし、本法案は州によるビットコインや仮想通貨への直接投資を許可するものではない。設立される基金は、あくまでも放棄されたデジタル資産や、そこから派生する収益(ステーキング報酬やエアドロップなど)の受け皿としての役割を担うものだ。
アリゾナ州では5月2日(現地時間)、「財務および年金資産の最大10%をビットコインのようなデジタル資産に投資することを可能にする別の法案(SB 1025)」に対して、知事が拒否権を行使していた。しかし、「州の予算安定化基金の最大10%をビットコインに投資することを認める法案(SB 1373)」が知事の署名を待つ段階になっており、これが成立すれば、州によるビットコインへの直接的な投資の道も開かれることになる。
昨今、米国では複数の州でビットコインおよび仮想通貨準備金創設に関する法案の審議が進んでおり、どの州がいち早く成立させるかが注目されていた。ニューハンプシャー州に続きアリゾナ州でも法案が成立したことで、米国各州における仮想通貨準備金設立に向けた動きはさらに加速していきそうだ。
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