Soneiumの700万ユーザー基盤を活用
DeFi(分散型金融)レンディングプロトコルの「Aave(アーベ)」は11日、Sony(ソニー)グループが推進するWeb3基盤「Soneium(ソニューム)」上でサービス提供を開始したと発表した。
アーべのソニューム参入は、DeFiプロジェクトが一般消費者市場へ本格的に進出する上で、重要な試金石と見なされている。
アーベは、ソニューム上で構築された700万ユーザー規模のエコシステムに、サービスを直接提供できるようになった。アーベにとって、この動きは単なる技術的な接続ではない。これまで暗号資産(仮想通貨)に馴染みのうすかった新たなユーザー層を開拓するための、きわめて戦略的な一手と見るべきだろう。
アーベ・ラボの創設者であるスタニ・クレチョフ氏は、その意図を明言している。「我々は消費者がいる場所、つまり信頼され、アクセスしやすい環境にいたい」と語る。彼によれば、ソニーが世界で築き上げてきたブランド力と、ソニュームがコンシューマー向けアプリケーションに特化しているという事実。この二つが、アーベにとって新たな主流ユーザーにリーチするまたとない機会をもたらすというのだ。
この提携は、通常通り、コミュニティの提案と投票を経て承認されたとみられる。初期段階では、USDT0、USDC.e、そしてWETHといった主要な仮想通貨がサポートされる。それぞれに、供給や借入上限などのリスクパラメータが設定されている。
さらに注目すべきは、アーベが独自に発行する分散型ステーブルコイン「GHO」も、将来的な統合が検討されており、その実用性が試されようとしている点だ。ソニュームチームは、このGHOを決済や貯蓄、デジタルコマースといった実社会のユースケースでテストし、その真の実用性を探求していく計画を明らかにしている。
アーべはまた、ソニュームが主導する流動性供給キャンペーンにも参加予定で、1億ASTRのトークンが割り当てられる。このキャンペーンは、日本発のWeb3ブロックチェーン「Astar(アスター)」との連携により、初期ユーザーの参加を促進するねらいがある。
もちろん、ソニュームが秋波を送るのはアーべだけではない。そのエコシステムには、すでにUniswap(ユニスワップ)v4やVelodrome(ヴェロドローム)、Stargate(スターゲート)、Lido(リド)といったDeFiの主要プロトコルが参画している。今回のアーべの参入は、ソニュームがDeFi、ゲーム、NFT、RWA(実世界資産)、メディアといった多様なWeb3領域でエコシステムを拡大する、という強い意志を象徴している。
事実、アーベの参入発表に先立つ6月9日、ソニュームは「Soneium For All(ソニューム・フォー・オール)」と名付けたゲームインキュベータープログラムを立ち上げたばかりである。これは、Web3プロジェクトの成長を資金面やリソース面で支援し、そのスケールと認知度向上を後押しする野心的な取り組みだ。わずか数日の間にこれだけの動きを見せていることからも、ソニュームの本気度がうかがえる。
DeFiのパイオニアと、コンシューマー領域を知り尽くした巨大企業。両者の邂逅が、仮想通貨の「大衆化」という長年の悲願に向けた、重要な一里塚となるのか。金融とエンターテインメントの境界線上で、いま壮大な実験が始まった。
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