Strategy(旧MicroStrategy)、2024年Q4決算で約6.7億ドルの純損失を計上

木本 隆義
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「ビットコインETF的会社」に巨額損失が生じたワケ

「MicroStrategy(マイクロストラテジー)」は5日、「Strategy(ストラテジー)」へのリブランディングを発表し、同日、2024年Q4決算で約6.7億ドルの純損失を報告した。

ストラテジーが2024年Q4で約6.7億ドルの赤字を叩き出したと聞いて、「おいおい、大丈夫か!?」と思った投資家は少なくないはずだ。だが、この数字は会計処理の“妙”にも左右されている。2024年Q4の決算では、期中の市場価格の最安値が取得原価を下回ったタイミングで減損損失を計上せざるを得なかった。現行の会計基準では、いったん減損が発生すると、その後ビットコインの価格が戻っても損失を取り消すことはできない。そのため、実際の資産価値が回復しても、会計上の数値には反映されない。酔った勢いで財布を落としたと思いこんだら、翌朝ベッドの下からひょっこり見つかったとしても、一度は「紛失」扱いになるのが減損会計の特徴である。

2025年からは公正価値会計が導入され、期末時点のビットコイン価格が上昇していれば利益として帳簿に反映される。したがって、今回の赤字は「単に会計上のもので、実際に損したわけではない」という見方もできる。売却する意図のないビットコインの価格変動による損失を、そのまま決算の赤字額として評価するのは尚早といえよう。

同社のソフトウェア事業は、旧社名の「マイクロストラテジー」時代にビジネス・インテリジェンス分野で一定の地位を築いた。しかし現在は「Microsoft(マイクロソフト)」や「Salesforce(セールスフォース)」などの巨大プレーヤーに押され気味だ。総売上は前年比3.0%減の1億2,070万ドルとなった。サブスクリプション収入は48.4%増加したものの、サポート収益が10.8%減少し、その他のサービス収益も20.8%減少。結果として全体の利益率は前年の77.3%から71.7%に低下した。

ビットコイン価格が上向けば株価が急騰するのも事実である。市場では「ビットコインの代替ETF的存在」と見なされることが多く、暗号資産(仮想通貨)相場がイケイケのときはストックも派手に動く。ギャンブルと紙一重だが、当たれば大きい。その一方で、株式増資による希薄化が進む点は懸念材料だが、長期的なビットコイン上昇を信じる投資家にとってはそれほど脅威ではないだろう。

同社が社名を「マイクロストラテジー」から「ストラテジー」に変更した点は象徴的である。新しいロゴにはビットコインの「B」がスタイライズされており、公式発表でも「世界初にして最大のビットコイン国庫企業」と位置付けている。ソフトウェア企業としての立ち位置を残しながらも、ビットコインを軸としたブランド戦略に明確に舵を切った以上、実態はほぼ「ビットコイン投資会社」と化したとの見方も強い。

同社は2025年のビットコイン利回り(BTC Yield)を最低15%とする目標や、ビットコイン利益(BTC $ Gain)100億ドルの達成を堂々と掲げる。これらは「数字が達成できればスゴいが、失敗すれば再び巨額損失」という高リスク・高リターンのいばらの道だ。現在の会計基準では、期中の最安値が取得原価を下回った場合、その時点で減損損失が発生し、赤字幅が一気に拡大する。一方で、公正価値会計の導入後は、ビットコイン価格の上昇が利益として反映され、株価上昇につながる可能性がある。極端な価格変動を伴う同社の財務戦略は、ハイボラティリティの典型と言える。

この状況を眺めると、結局は「ビットコインが上がれば万事OK、下がれば地獄」とも捉えられる企業である。伝統的なソフトウェア事業は伸び悩み、ビットコイン投資に活路を見出しているのが実態だ。大化けが期待できる代わりに、決算が悪化すれば市場が冷ややかに反応するのも当然である。

しかし、ここまで“男気”を全振りしてビットコインで稼ごうという姿勢は他社にないインパクトを生む。慎重派には手が出しにくいが、リスク許容度の高い投資家にとってはでっかいロマンがあるといえよう。

関連:マイクロストラテジーのナスダック100入りがもたらす栄光と試練

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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