最新「IP-Fi」、AIによる無断データ使用をゆるしません
知的財産(IP:Intellectual Property)管理プラットフォーム「Story Protocol(ストーリープロトコル)」は13日、パブリックメインネット「Homer(ホーマー)」をローンチした。これにより、知的財産の登録、ライセンス管理、ロイヤリティ分配がブロックチェーン上で自動化され、クリエイターが直接IPを管理できる環境が整う。
従来、IPの管理は大手出版社やレコード会社など中央集権的な仲介が主流で、契約の煩雑さに加え、中間手数料をがっつり取られるケースも多かった。ストーリープロトコルは、IPをブロックチェーン上でトークン化し、スマートコントラクトを用いたライセンス管理と収益分配の自動化によって、こうした「ゴタゴタ」を解決しようというわけだ。特に、AIによる無断データ利用への対策としても注目され、今後はAIモデルのトレーニングデータ管理にも応用できる可能性がある。
ホーマーは、Cosmos SDKとEVM(イーサリアム仮想マシン)互換のハイブリッドなレイヤー1ブロックチェーンで、CometBFT(Byzantine Fault Tolerance)のコンセンサスを採用。テストネット「Iliad(イリアス)」「Odyssey(オデッセイ)」を経て、64のバリデータが初期セットとして選定された。ネットワークはパーミンションレスで、新規バリデータの参加も可能だ。
基軸通貨である「IP」トークンは、ホーマーの公開と同時に運用が開始された。総供給量は10億枚で、初期供給の25%がアンロックされ、一部はコミュニティ向けの初期インセンティブとして提供。シビル攻撃(BOTや複数アカウントによる不正取得)を防ぐための仕組みが導入され、「真のユーザー」にトークンが行き渡る設計だ。ステーキングは42日間の「シンギュラリティ期間」を経て「ビッグバンイベント」後に報酬が発生する仕組みとなっている。
資金面では、「Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ:a16z)」から複数のラウンドにわたり出資を受けており、2024年8月のシリーズBラウンドでは8,000万ドルを調達。「Polychain(ポリチェーン)」や「Samsung Next(サムスンネクスト)」なども参加し、評価額は22.5億ドルに達したと報じられている。累計調達額は1億4,000万ドルに上り、IP市場の規模が61兆ドルとも言われる中、ブロックチェーン技術の導入に対する投資家の期待が高まっている。
さらに「Proof-of-Creativity」と呼ばれる独自の仕組みにより、ストーリープロトコルはコンテンツのオリジナリティを分散型で検証し、不正コピーや重複登録を防ぐことを目指している。AI時代の著作権管理の課題に対応するため、音楽やアートだけでなく、学術論文や特許など幅広い知的財産にも適用可能なインフラを提供し、IPの透明性と流動性を高める。現在、直接的な大規模競合は少なく、汎用的なIP管理インフラとしては先駆者の立ち位置にあるといえる。
DeFiが金融の流動性を変えたように、IPを担保化して融資を受けたり、フラクショナライズして多数の投資家が権利を共有したりする「IP-Fi」の概念も注目されている。すでに音楽著作権をNFT化し、収益をシェアする試みも始まっており、今後の活用次第では、ブロックチェーンがIP管理を塗り替える可能性がある。ただし、大手企業やクリエイターの本格参入、法整備、ユーザビリティの向上といった課題も残る。ストーリープロトコルは、IPをトークン化しライセンス市場を形成することで、ブロックチェーンを活用したIP管理の新たなスタンダードとなることを目指している。