株主の「同じ目線で経営を」要望が契機、BTC連動性活用で新形態の株主視点経営
暗号資産(仮想通貨)・エネルギー・Web3領域を手がける「リミックスポイント(東証スタンダード:3825)」は8日、同社の代表取締役社長の役員報酬について、その全額を実質的にビットコイン(BTC)で支給する方針を明らかにした。国内の上場企業において、代表取締役の報酬全額を仮想通貨で支払うのは、これが日本初の試みとなる。
この方針転換の背景には、株主からの要望があった。先般開催された株主総会で、複数の株主から「経営陣が株式を保有し、株主と同じ目線で経営にあたるべき」との建設的な意見が寄せられた。しかし、上場企業の経営陣による自社株取得には、インサイダー取引規制などの制約があり、適時な株式保有が困難な場合がある。
そこで同社は、自社の株価がビットコイン価格に連動する傾向が強いという特徴に着目。代表取締役社長が役員報酬の全額をビットコインで受け取ることにより、株主と経済的リスクとリターンを共有する新しい形の「株主視点経営」を実現するとした。
実際の支給方法について同社は、会社法上および税務上の適切な整理を踏まえ、形式上は役員報酬を日本円で支給し、その全額をもって同額相当のビットコインを市場価格で取得する。その後、代表取締役社長の指定する仮想通貨ウォレットへ送付することで、実質的なビットコイン支給を行う。
海外では、米ナスダック上場のストラテジー(旧マイクロストラテジー)が2021年4月に取締役会の役員に対してビットコインで報酬を支払う方針を発表した事例がある。ただし、代表取締役社長の報酬全額をビットコインで支給する取り組みは、上場企業では日本初となる。
リミックスポイントは2025年7月時点で1,051BTCを保有し、時価評価額は約167億円に達している。同社は仮想通貨を中核的アセットと位置づけ、継続的な買い増しを行っている。同社の株価は実際にビットコイン価格との連動性が強いことが指摘されており、今回の決定はこうした特徴を活用したものと見られる。
同社の代表取締役社長は「自らの報酬を全額ビットコインで受け取るという意思決定は、株主の皆様と『同じ船に乗る』という意思表示だ。企業価値の向上に責任を持ち、株主視点での経営に全力を尽くしてまいります」とコメントし、同社は今後も、仮想通貨を基盤とした次世代の財務戦略・トレジャリーマネジメントの確立に挑戦するとしている。
仮想通貨を事業の中核に据える企業として、自らの経営体制そのものを、仮想通貨と一体化させる今回の挑戦。それが単なる奇策で終わるのか、それとも次世代の財務戦略の嚆矢となるのか。いく末を見守りたい。