ブロックチェーン分析企業のTRMラボは27日、予測市場に関する調査レポートを公開した。2025年初頭に12億ドル(約1,900億円)だった月間取引高は、2026年1月には200億ドル(約3.2兆円)を突破。参加する独自ウォレット数も84万に達しており、予測市場は一部の愛好家向けから、実世界のリスクを価格化する主要な金融市場へと急成長を遂げている。
月間12億ドルから210億ドルへ、1年で17倍に拡大した驚異の成長率を解剖
市場を牽引するのは、地政学、マクロ経済、政治に関する契約だ。かつては暗号資産(仮想通貨)の価格予想が主流だったが、現在は米・イラン情勢などの国際ニュースが取引の中心である。2026年2月の「米国がイランを攻撃するか」という市場には、単一で7,300万ドル(約117億円)以上の資金が投じられた。
背景には制度化と大手参入がある。2025年にはロビンフッドが予測市場ハブを開設し、2,700万人の顧客に門戸を開いた。同年10月にはニューヨーク証券取引所の親会社ICEがポリマーケットへ最大20億ドル(約3,200億円)の戦略的投資を実施。これが機関投資家からの「お墨付き」となり、信頼性が向上した。
ユーザーベースも拡大している。2026年2月までの半年間で独自ウォレット数は約3倍の84万に増加した。これは既存ユーザーの取引額が増えただけでなく、新規層が幅広く参入したことを示している。グーグル・ファイナンスが予測市場のオッズを掲載し始めたことも、一般層への浸透を後押しした。
オンチェーンデータが示すユーザーの取引実態
ユーザー層は中堅トレーダーが中心だ。取引の約45%が取引回数11〜1,000回の層によるもので、アルゴリズムを用いる業者が約35%で続く。一方、1回限りの参加者は0.2%未満に留まる。高収益なウォレットは特定分野に固執せず、市場間の価格の歪みを突く戦略をとる傾向が強い。
TRMラボは、こうした市場の厚みが増したことで、予測市場は単なる投機プラットフォームを超え、リアルタイムの情報集約とリスク価格設定を担う重要インフラへと進化する可能性があるとした。政策決定や経済動向の先行指標として、既存の予測ツールを補完または競合する役割が見込まれる。
市場操縦の懸念と健全化への取り組み
急成長の影で、不自然な取引も確認されている。2026年2月のイラン空爆直前、特定の4つのウォレットが同時に資金を調達し、多額の利益を得た後に市場を去った。これは非公開情報を利用した「インサイダー取引」の疑いを生んでおり、ブロックチェーンの透明性がこうした異常な動きを可視化している。
こうした課題に対し、主要プラットフォームのポリマーケットとカルシは3月23日、市場の完全性を高める新策を発表した。非公開情報を持つ者の取引制限や監視強化が盛り込まれている。米国でもインサイダー取引を禁止する法案が浮上しており、急速に法的枠組みの整備が進みつつある。
予測市場が200億ドル規模に達したことは、分散型金融の社会的意義を象徴している。今後は「予測の精度」だけでなく、今回指摘された市場操縦への耐性が問われるだろう。取引データの透明性は強みだが、規制当局とプラットフォームが連携し、実効性のある監視体制を早期に確立することが不可欠だ。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=160.1円)




