Sui、ファントムウォレットに正式統合|シームレスなマルチチェーン対応

木本 隆義
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Suiの急成長するエコシステムと処理性能を評価し統合

ブロックチェーンネットワーク「Sui(スイ)」は29日、暗号資産(仮想通貨)ウォレットサービス「Phantom(ファントム)」に正式対応したと発表した。

このニュースは、マルチチェーン対応におけるファントムの本気度を明確に示しているといえる。「Solana(ソラナ)」「Ethereum(イーサリアム)」「Bitcoin(ビットコイン)」と主要チェーンをそろえたファントムが、新参ながらもMove言語による「高速トランザクション」と「低コスト」を謳うスイに目をつけたのは自然な流れだろう。2024年末にかけてスイのTVLは急速に伸び、特に第4四半期には顕著な成長を見せた。2025年1月にはそのTVLが20億ドル超に達し、ウォレット側としてもこれを放っておく理由はない。

スイは代替資産の自動検出やアプリ内スワップ、マルチチェーン間のシームレスなブリッジ機能などを計画しているという。また、既存のファントムユーザーアカウントへのスイアドレス自動追加や、秘密鍵のインポートを容易にする機能も提供予定だ。こうした追加機能が、ファントムがスイを取り込む大きな動機の一つになったのではないかと考えられる。

ブロックチェーンの発展においてはネットワーク効果が重要な鍵を握る。ユーザー数と開発者数が増えれば増えるほど、「そのチェーンを使ってみよう」と思う人間は雪だるま式に増加するからだ。ファントムにはすでに月間1,500万人規模のユーザーがいるとされ、スイエコシステムに誘導するには十分すぎる裾野である。スイとしてもMove言語を活かしたDAppsや高速処理の特長をアピールしやすくなり、開発者や資金が集まりやすくなる。これこそ「ウハウハ現象」と呼ぶにふさわしい相乗効果だ。

ファントムはソラナ、イーサリアム、ビットコインに加え、今回のスイ対応によってさらにマルチチェーン化が進む。煩雑なネットワーク切り替えやアドレス管理の手間を減らし、一つのウォレットで多様な資産を取り扱う体験を提供することは、ユーザーにとって魅力的である。実際、スイトークンやBLUE、SENDなどのトークンに加え、NFTの送受信やスワップがファントム上でシームレスに行えるようになる見込みだ。

スイは2022年の実験で、単一ノード環境(M1 MacBook Pro)で最大120,000 TPSを記録した実績があり、さらに100の分散バリデーター環境では、理論上最大297,000 TPSを達成したと報告されている。このように、スイはトランザクション処理能力が非常に高く、特にブロックチェーンゲーム分野での需要が高いとされている。大規模アクセス時におけるガス代の高騰や、処理詰まりといった問題を軽減しうる点は大きなアドバンテージだ。ゲームやDeFiの利用者は「速い」「安い」「コケない」を重視するため、ファントムユーザーがスイ上のDAppsを快適に使えることは、ユーザーベース拡大につながるだろう。

スイエコシステムでは、DeFiやNFT市場がどこまで盛り上がりを見せるかが重要である。TVLがさらに拡大すれば、投資家が本格的に資金を投じる可能性が高まり、NFTコレクターや開発者も参入しやすくなるだろう。資金流入と開発拡大がユーザー増加を呼び込み、さらに多くの資金が集まるという好循環が見込まれる。

ファントムはUI/UXに定評があり、初心者でも扱いやすい設計を志向している。マルチチェーン対応が増えるほど操作が複雑になりがちだが、そこをシームレスにまとめあげるのがファントムの強みだ。スイはまだ発展途上にあるものの、この両者の組み合わせがうまく機能すれば、一気にユーザーが増える可能性がある。将来的にファントムが追加機能を充実させ、スイエコシステムのさらなる成長が実現する余地も大いにあるだろう。

関連:ソラナウォレット「ファントム」、Suiに対応を発表
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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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