市場連動型インフレ抑制モデルの可能性
米投資ファンドの「Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)」は16日、「ソラナのインフレ率削減」の新方針をGitHub上で提案した。
提案された方針は、ネットワークの持続性とセキュリティを両立させる新たなアプローチ。従来、ソラナは約4.8%のインフレ率で発行を行い、段階的に最終的には1.5%へ引き下げる計画を有していた。本提案では、固定スケジュールではなく、ネットワークのステーキング率を指標に、動的にインフレ率を調整する。
ソラナは定期的にトークン(SOL)を発行し、その一部をステーキング報酬としてバリデーターやステーカーに配分してきた。高いインフレ率はステーカーにとって利回りを高める一方、SOLホルダー全体にとっては希薄化のリスクが伴う。
マルチコイン・キャピタルによると、ネットワークの安全性に十分なステーキング率を確保できるのであれば、新方針により無駄なインフレを抑え、柔軟な市場メカニズムによる調整を図るべきだとしている。一方で、インフレを下げれば当然ながらステーキング利回りも下がるため、ステーキングを続けるインセンティブが損なわれかねない点は懸念材料である。ただし、近年成長しているMEV(Maximum Extractable Value)関連の報酬がそれを補う可能性がある。
本提案の中核は、ステーキング率を50%とする目標を設定し、それを上回った場合はトークン発行量(インフレ)を引き下げ、下回った場合は引き上げるという可変システムである。ソラナのネットワークにおいては、3分の1や過半数など、セキュリティ確保に必要とされる閾値が複数存在する。おおむね50%前後を保つことで、分散化と安定性のバランスが取れると考えられている。
本提案の背景には、「高インフレが続けばステーカーだけが有利になる一方、ネットワーク全体のトークン価値が不必要に希薄化する」という問題意識がある。「過度のインフレ抑制は、ステーキングをためらわせ、セキュリティを損なう恐れがある」という懸念も拭えない。ゆえに、市場の需給やMEVの状況と連動しながら発行量を調整することは、ネットワークの持続性と投資家保護の観点から魅力的な手法である。もっとも、ステーキング率を50%前後に安定させるためには、CEXやDeFi勢の動向、タックス面の問題など多様な要素を併行的にモニタリングする必要がある。
本提案が実行された場合、ステーキング率が急落するリスクや、想定以上にMEV報酬が伸びないリスクはあるものの、新たなインフレ調整モデルが成功すれば、ソラナのエコシステムをさらに持続可能な方向へ導く契機となるだろう。ソラナのコミュニティがこの提案をどのように評価するか、注目したい。