下院での最終採決へ移行、法制化の期待高まる
米上院は17日、「米国ステーブルコインの国家イノベーションの指導と確立(GENIUS法案)」の修正版を賛成68票・反対30票で可決したことが明らかになった。これは、ステーブルコインをめぐる法制度が曖昧な中で長年求められてきた規制の明確化を意味しており、米国がデジタル通貨の世界的な枠組みにおいて一歩リードする可能性を示す重要な動きである。
この歴史的な可決を受け、暗号資産(仮想通貨)業界および政財界の関係者からはさまざまな反応が寄せられている。仮想通貨XRPを手がける「Ripple(リップル)」のCEOブラッド・ガーリングハウス氏は18日に自身の公式Xを更新。「ドッド・フランク法以来、初の主要な金融法案であり、仮想通貨関連としては初めて上院を通過した歴史的法案だ」と法案可決に喜びを示した。長年にわたり不明確な規制環境と戦ってきた同氏やリップル社にとっても、この法案可決は悲願のひとつだったと言えるだろう。
また、米国財務長官スコット・ベッセント氏も同日、法案可決に対して公式Xで反応を示した。同氏はステーブルコイン市場が2030年までに3.7兆ドル(約536.9兆円)規模に成長するとの予測に触れたうえで、法案可決がその後押しになると強調した。さらに、ステーブルコインの拡大が米国債への民間需要を高め、結果として政府の借入コストが低下する可能性を示唆。多くのユーザーをドルベースのデジタル資産経済へ引き込めるとの可能性も示している。
GENIUS法案を提出したビル・ハガティ上院議員も18日、「米国は世界の仮想通貨の中心地となることに一歩近づいた」と公式Xで法案可決に対する喜びをあらわにした。加えて同氏は、2030年までにステーブルコイン発行体が世界最大の米国債保有者となる可能性に触れ、ドルの基軸通貨としての地位をデジタル経済においても強固にする展望について述べている。
今回上院を通過したGENIUS法案は、5月に一度上院での採決に失敗している。その背景には、ドナルド・トランプ米大統領とその家族が関わる「World Liberty Financial(ワールド・リバティ・ファイナンシャル、WLF)」が発行するステーブルコイン「USD1」との関係性があり、民主党議員からは利益誘導の懸念が強く示されていた。今回の修正版では、WLFとの関係性に関する修正は盛り込まれなかったため、民主党側からは再び強い修正要求が挙がっている。
今後、GENIUS法案は下院での最終採決に移行し、トランプ米大統領の署名を経て正式に法制化される見通しだ。法案の成立は、米国が仮想通貨規制における世界的リーダーとしての地位を確立する第一歩になる可能性が高いだろう。今後の下院での審議と大統領署名に注目が集まる中、この法案がどのような形でまとまるのかに目が離せない。
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