(続) ビットコイン一代男|エルサルバドル大統領に学ぶ長期投資の極意
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は16日、同国が保有するビットコインの運用状況をX(旧ツイッター)上で公開した。連日のATH更新を受けてのことと推測され、1年8ヵ月前に比べて、運用状況は劇的に改善している。
(運用状況まとめ)
2023/04/09 | ⇒ | 2024/12/16 | (617日経過) | |
①保有枚数 | 2,630枚 | ⇒ | 6,025枚 | ➕3,395枚 |
②@BTC時価 | 28,000ドル | ⇒ | 105,000ドル | ➕77,000ドル |
③保有BTC時価総額 | 110億円 | ⇒ | 980億円 | ➕870億円 |
④@BTC取得価格 | 43,000ドル | ⇒ | 45,000ドル | ➕2,000ドル |
⑤保有BTC取得原価 | 175億円 | ⇒ | 415億円 | ➕240億円 |
⑥損益 | ▲65億円 | ⇒ | ➕465億円 | ➕530億円 |
⑦利回り | ▲35.0% | ⇒ | ➕135.0% | —- |
本稿では、運用状況の①〜⑦の数字を個別に検証していく。
なお、比較時点は、本日と前回反響が大きかった拙稿『ビットコイン一代男|エルサルバドル大統領に学ぶ長期投資の極意』の執筆日(2023年4月9日)となることをご了承願いたい。
①保有枚数(2,630枚⇒6,025枚)
これはいきなり意外だ。
ブケレ大統領はかつて「2022年11月17日以降、毎日1BTCずつ購入していく」と宣言し、そのペースを忠実に守っていた。
だが、直近1年8ヵ月(617日)では3,395枚も増えている。1日5.5枚のペースだ。
結果オーライではあるが、もし今日の時点でBTCが暴落していれば、ブケレ大統領は本件のツイートはしなかっただろう。長期投資の観点からは、このような「後出し」(実はたくさん買っていたんですよ、へっへっへ)は危険な兆候だ。
②@BTC時価(28,000ドル⇒105,000ドル)
ブケレ大統領は、2021年9月のBTC法定通貨化時に43,000ドルで「ジャンピングキャッチ」(高値掴み)したBTCの含み損に長期間苦しめられてきた。だが、積立投資の場合、高値掴み後に地獄を見てそこから徐々に回復するパターンが一番もうかる。
イーロン・マスク、孫正義、ビル・ゲイツといった、名うての経営者たちが含み損に耐えきれず、BTCを投げてしまう中、不安に耐えてよくがんばった。
③保有BTC時価総額(110億円⇒980億円)
エルサルバドルが保有するBTCの時価総額は現在、円換算でほぼ1,000億円。1年8ヵ月前の110億円から9倍近くに膨れ上がった。
だが、拙稿『エルサルバドルとアルゼンチン、中南米における仮想通貨規制で協力』でも書いたことだが、「ビットコイン立国といっても、この程度の額か‥」というのが正直な感想だ。
スマートシティを実現するには、少なく見積もっても1兆円はかかる。やがて来る勝利の日はまだ遠い‥。
④@BTC取得価格(43,000ドル⇒45,000ドル)
これも意外だ。
@BTC取得価格は、1年8ヵ月前に比べて、わずか@2,000ドルしか上昇していない。よほど買い増しのタイミングがよかったに違いない。
繰り返しになるが、結果オーライで爆益となったものの、長期投資において恣意的な枚数操作は、焦りや自滅のもとだ。
⑤保有BTC取得原価(175億円⇒415億円)
略。これは特にコメントの必要はないだろう。
⑥損益(▲65億円⇒➕465億円)
見事なプラ転といえる。
⑦利回り(▲35.0%⇒➕135.0%)
➕135.0%なので、時価総額が取得原価総額の2.35倍に増えたことになる。
ときに、昨今、量子コンピュータの急激な進化によって、ビットコインが無価値になる可能性が指摘されているが、そのようなリスクは運用成績の評価にどう織り込めばよいのだろうか?
とっておきのリスク評価方法を紹介しよう。
ワーストシナリオだけを考慮し、その損失の期待値を引けばいい。
本件であれば、ワーストシナリオは「ビットコインが無価値になること」(全損)なので、その確率を20%とあなたが見積もったとすれば、それを実績値の➕135.0%から引いてやればいい。
それでも➕115.0%残るのだから、ブケレ大統領の投資手腕は見事という他ない。
実は堅実なブケレ大統領
ビットコインばかりが注目されているブケレ大統領だが、あくまで彼の経済政策の本命は、財政健全化だ。2025年にはついに念願の「プライマリーバランス=0」を達成するという。
いまだに積極財政だの、機動的財政出動だの、MMTだの言ってる日本とは全く対照的だが、国家の大計は百年単位で計るもの。その評価は将来の歴史家にゆだねなければなるまい。
関連:『ビットコイン一代男|エルサルバドル大統領に学ぶ長期投資の極意』
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情報ソース:ブケレ大統領公式X
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