金融庁、暗号資産の金商法適用を提言──インサイダー規制など包括的強化へ

JinaCoin編集部
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Highlights
  • 金融庁が仮想通貨の金商法適用を提言、インサイダー取引規制など包括的強化へ
  • IEO実施時は投資上限額を設定、上場前後の優遇発行は原則禁止の方針
  • 月平均350件超の苦情を背景に、取引所の販売所誘導問題も見直し対象

金融審議会は10日、暗号資産(仮想通貨)の投資対象化が急速に進む中で、利用者保護を中心とした制度見直し案をまとめた報告書を公表した。本報告書は、7月以降6回にわたり「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」で議論された内容を整理し、暗号資産取引の現状と課題を踏まえた規制強化の方向性を示している。

月平均350件以上の現状受け制度再構築へ

国内では延べ1,300万超の口座開設や5兆円規模の預託残高が確認される一方、金融庁には月平均350件以上の苦情が寄せられ、詐欺的勧誘や無登録業者によるトラブルが深刻化している。犯罪収益移転やハッキング被害の懸念も続き、安心して利用できる取引環境の整備が急務となっている。

報告書は、暗号資産の多くが価格変動によるリターンを期待した取引である点を踏まえ、金商法による規制が適当と整理した。一方、NFTは多様な利用実態から一律規制に慎重姿勢を示した。ステーブルコインについては、送金・決済用途が中心で、投資目的の売買は想定しにくいとして、資金決済法での規制を維持する方向性が示された。

取引所に対する規制も強化される見込みだ。暗号資産の売買等は証券会社と同様に「第一種金融商品取引業」に位置付けられ、顧客財産の分別管理に加え、サイバー攻撃への備えなど安全管理措置が金商法上の義務として新設される。

また、一部の取引所が顧客を手数料の高い「販売所」形式の取引へ意図的に誘導している懸念も指摘された。金商法では最良の取引の条件で顧客の注文を執行するための方針及び方法を定めて実施する最良執行義務が設けられており、こうした義務との整合性の観点から、見直しが求められる可能性がある。

取引の透明性確保に向け、発行者や取引所にはリスクや商品性に関する情報提供を義務付け、虚偽記載には罰則や課徴金制度の導入も検討される。さらに、明文規定のなかったインサイダー取引規制も導入され、上場情報や大口取引に関する重要事実を知る関係者の公表前売買が禁止される見通しである。

IEO(Initial Exchange Offering)する際の利用者保護策も盛り込まれた。監査法人による財務監査を受けていない発行者が一般投資家から資金調達を行う場合、利用者の投資上限額を設定すべきと提言されている。また、特定の者だけに有利な条件で追加発行し既存保有者の不利益となる事態を防ぐため、上場前後の優遇発行を原則禁止する方針も示された。

今回の報告書は、暗号資産を投資対象として扱う現実を踏まえ、既存の金融法制との整合性を高める方向を明確にしたと考えられる。情報開示やインサイダー規制の導入により、国内市場の透明性は一定程度向上するとみられる。今後は、利用者保護と市場活性化の双方を損なわない運用が課題となるだろう。

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