貿易摩擦の懸念で市場が乱高下、投資家に大きな打撃
暗号資産(仮想通貨)市場は3日、過去24時間の清算額が20億ドルを突破。この清算額は、2020年3月のコロナショックや2022年11月の仮想通貨取引所「FTX」崩壊時を上回り、投資家の間で市場への不安が拡大した。
仮想通貨のデータ分析プラットフォーム「CoinGlass(コイングラス)」が提供するデータによると、執筆時点における過去24時間の清算額は15億4,000万ドルを記録。46万人を超えるトレーダーのポジションが清算されているという。その大部分はロングポジションの清算となっており、約10億8,000万ドルと全体の70%の清算額を占めている。
今回の仮想通貨市場の急落の背景には、米国が発表した関税措置があると指摘されている。ドナルド・トランプ大統領は1日、中国やカナダ、メキシコからの輸入品に対する関税措置の大統領令へ署名。中国には10%、カナダとメキシコには25%の追加関税を4日に発動する運びとなった。この関税措置が世界的な貿易摩擦を引き起こすのではないかという懸念が広がり、仮想通貨市場における投資家の不安感を煽った。
仮想通貨市場の分析を担う「Bitget Research(ビットゲット・リサーチ)」のチーフアナリストであるライアン・リー氏は、仮想通貨メディア「CCN」に対し「報復貿易戦争への懸念が投資家心理に影響を与え、仮想通貨を含むリスクの高い資産クラスが売られた」とコメント。さらに同氏は、これまで市場変動へのヘッジとして機能してきたビットコインが、最近は世界経済の動向に敏感になっていることも指摘している。
しかし、3日になり事態は急変した。トランプ大統領はカナダ・メキシコ両国と関税措置の停止で合意。メキシコに対する関税措置は1カ月間、カナダに対する関税措置は少なくとも30日間の停止とされた。さらに、トランプ大統領は中国と24時間以内に関税に関する協議を行う考えを示した。
この動きを受けて市場の不安感が和らぎ、92,000ドル付近まで下落していたビットコインは急騰。執筆時点では102,000ドル付近で一旦抑えられている状況だ。
今回の仮想通貨市場の急変動は、世界経済の動向が市場に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにした。今後もトランプ政権の動向や世界的な経済状況の変化により、仮想通貨市場は大きく揺れ動く可能性が考えられる。こうした不確実性の中でリスク管理の重要性は一層高まっている。投資家はこれまで以上に慎重な判断が求められるだろう。
関連:ビットコイン暴落、関税戦争への懸念で一時9万1000ドル台【仮想通貨チャート分析】BTC、ETH、XRP、SOL
関連:仮想通貨バブル崩壊は金融市場に壊滅的な影響を及ぼす=米ヘッジファンド