北米企業CFOの23%が仮想通貨活用を計画──特に大企業で利用意欲高まる

木本 隆義
13 Min Read

仮想通貨を巡る社内協議、4割の企業で進行中

監査・コンサルティング大手の「Deloitte(デロイト)」は7月31日、2025年Q2の「北米CFOシグナル調査」の結果を公表した。この調査は6月4日から18日にかけて、売上高10億ドル以上の北米企業に勤める最高財務責任者(CFO)200人を対象に実施された。

驚くべきことに、調査対象のCFOのうち23%、つまり4人に1人近くが、自社の財務部門が今後2年以内に投資または支払いの目的で暗号資産(仮想通貨)を活用するだろうと回答した。

この傾向は、企業の規模が大きくなるほど顕著になる。売上高が100億ドルを超える巨大企業に絞ると、その割合は約40%にまで跳ね上がる。もはや仮想通貨を「得体の知れないもの」と一蹴する時代は終わりを告げたのかもしれない。事実、長期的に見ても仮想通貨を業務で利用するつもりは「全くない」と断言したCFOは、わずか1%にとどまった。これは、企業における仮想通貨導入の「転換点」が近づいていることを示唆しているのではないか。

もちろん、CFOたちが手放しで仮想通貨を歓迎しているわけではない。最大の懸念材料として挙げられたのは、やはり「価格の変動性」だ。CFOの43%がこれを問題視している。ビットコインのような主要な仮想通貨が、短期間でその価値を大きく変動させてきた歴史を考えれば、当然の懸念であろう。次いで、「会計および管理の複雑さ」(42%)、「業界規制の欠如」(40%)が続く。今年1月に米国証券取引委員会(SEC)が仮想通貨の会計処理に関するガイダンスを撤回し、新たなタスクフォースを設置するなど、規制環境が未だ流動的であることも、彼らの慎重な姿勢に拍車をかけている。

しかし、そうした不安要素を抱えながらも、企業財務のプロたちは仮想通貨の持つ可能性に目を向け始めている。調査では15%のCFOが、今後2年以内に投資戦略の一環として、ビットコインなどの非安定型仮想通貨を購入する可能性があると回答。この数字も、売上高100億ドル以上の企業では24%に上昇する。従来の安全資産では得られない大きなリターンへの期待が、リスクを取る動機となっていることは想像に難くない。

さらに、仮想通貨の用途は投資だけにとどまらない。同じく15%のCFOが、米ドルなどに価値が連動する「ステーブルコイン」を2年以内に決済手段として受け入れる可能性を示唆した。大企業ではこの割合も24%だ。ステーブルコイン決済の魅力としてCFOたちが挙げたのは、「顧客プライバシーの保護強化」(45%)や「国際間取引の円滑化」(39%)であった。銀行のような仲介機関を不要にする仮想通貨取引は、コストを削減し、決済を迅速化させる。これは、グローバルに事業を展開する企業にとって極めて魅力的だ。

長期的な視点では、サプライチェーン管理での活用も期待されている。半数以上(52%)のCFOが、商品の追跡に仮想通貨やブロックチェーン技術が応用できると考えている。ブロックチェーン上に記録される取引情報は、複雑なサプライチェーンの透明性を高める上で強力な武器となり得る。

すでに企業内での議論は活発化している。CFOの37%が「取締役会と仮想通貨について協議した」と答え、41%は最高情報責任者(CIO)と、34%は取引銀行と話し合った経験があると回答した。主要な関係者と「まったく話したことがない」CFOは、たったの2%だった。

北米の企業社会において、仮想通貨の存在感が高まりつつあることは確かだ。財務のプロたちは、リスクとリターンを天秤にかけながら、次の一手を慎重に見極めようとしている。

関連:バンク・オブ・アメリカ、ステーブルコイン参入を検討──仮想通貨規制の動き背景に
関連:韓国20~50代の27%が仮想通貨保有、資産構成比は平均14%に=ハナ金融研究所

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

Share This Article
Follow:
リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA

厳選・注目記事

YouTube