ビットコインへの大規模資金流入が与える影響
米投資会社「Bitwise(ビットワイズ)」のCIOマット・ホーガン氏は29日、同社HPのコラムで、トランプ大統領の大統領令が4年周期の市場サイクルに影響を与え、これまでの周期を変える可能性があると指摘した。
トランプ大統領が署名した24日の大統領令は、アメリカをデジタル資産の中心地と位置付ける方針を鮮明にしている。これは連邦機関に対して暗号資産(仮想通貨)に関する規制枠組みの整備を促し、さらに、銀行が仮想通貨を従来の資産と並行して扱える環境を整えることを推奨する意欲的な内容である。かつてはビットコインに懐疑的だったトランプ大統領だが、近年は「仮想通貨大統領」を標榜するに至ったことで、市場に対するスタンスを大きく転換している。さらにCBDC(中央銀行デジタル通貨)の開発を積極的に推進するのではなく、既存の仮想通貨の普及を後押しする方針を明示している点も興味深い。
ビットコインには4年に1度の「半減期」が存在し、マイニング報酬が半分になる。需給バランスが変わりやすいため、このタイミングを起点とする価格の急騰と調整が繰り返される構図が長らく続いてきた。半減期直後は特に上昇が目立ち、投資家が「4年スパン」のパターンを信じてきた経緯がある。しかし、ホーガン氏の指摘によれば、トランプ氏の行政命令で「メガトン級の資金」が市場に流れ込む可能性があり、過去のようなきれいなBTCサイクルにはならないかもしれないという。
トランプ大統領の新たな政策は、下記のような影響を市場にもたらすと考えられる。
- 機関投資家の大規模参入
明確な規制の枠組みが用意されれば、これまで仮想通貨に慎重だった大手投資家も動きやすくなるとみられる。結果的に下落局面でも買い支えが入り、相場の急落リスクがやや抑えられる可能性がある。 - ボラティリティ低下か、それとも拡大か
大量の資金が入り流動性が増せば、短期的な乱高下が和らぐという見方がある一方、新たな投機マネーが押し寄せればボラティリティがむしろ高まる危険も否定できない。 - ETFへの期待
ビットコインETFの進展が加速すれば、ウォール街を中心にさらなる資金流入を呼び込む引き金となりそうである。明確な法整備と合わせて、相場上昇の火種になるとの見方もある。
ホーガン氏は、従来のサイクルほど明確な価格パターンは望めなくなる可能性を指摘している。政治主導による規制変更はマーケットを一気に盛り上げる半面、思わぬ強化策が飛び出して急落を招くこともある。4年どころか月単位で状況が変わりかねないため、「サイクル崩壊」はむしろ自然な流れともいえる。
さて、投資家はどう構えるべきだろうか?
- 長期投資なら規制リスクと恩恵を勘案すべし
ルールがはっきりすれば大手資金が流入し、相場を押し上げる効果が見込まれる。だが、政治の風向き次第でリスクが顕在化するシナリオも頭に入れておきたい。 - 過度なバブル観測には注意
「大統領令でビットコインが20万ドルへ」など楽観的な声は絶えないが、過去のバブル崩壊を忘れるべきではない。冷静な視点を保つ必要がある。 - 政局の行方を常に観察
米国が政権交代や新たな規制政策を打ち出せば、市場心理は一気に転じる。政治は流動的であり、ホワイトハウスの意向一つで天国と地獄が紙一重になる。
ここまで明確な政策が打ち出されれば、少なくとも相場環境が変わるのは確かである。大きな転機が到来する可能性を見据え、「政治がらみのアップダウンに要注意」と大まかなことを言わざるを得ない。
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