米アンカレッジ、ステーブルコインUSDMの「マウンテン・プロトコル」買収で最終合意

木本 隆義
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機関投資家向けステーブルコイン事業を強化

暗号資産(仮想通貨)プラットフォーム企業の「Anchorage Digital(アンカレッジ・デジタル)」は12日、バミューダ金融庁の規制下で米国債担保型ステーブルコインUSDMを発行する「Mountain Protocol(マウンテン・プロトコル)」の買収につき最終合意に達した。クロージングは通常の手続きと規制当局の承認を条件とし、買収後はマウンテンの人材・技術・ライセンス枠組みを統合して機関投資家向けステーブルコイン事業を強化する予定。

ステーブルコインは低コストかつ24時間決済を可能にし、米国でも法整備が進む中で金融アクセスを拡大している。アンカレッジはこうした潮流を受け、ステーブルコイン基盤の強化が重要であると位置づけたとみられる。

アンカレッジは2017年に設立された連邦認可仮想通貨銀行「Anchorage Digital Bank N.A.(アンカレッジデジタル銀行)」を中核とするグローバルプラットフォームで、カストディ、ステーキング、トレーディングなどの機能を展開する。米国で唯一の連邦公認仮想通貨銀行としてFDIC(米連邦預金保険公社)加入のサブカストディアン経由で法定通貨の保管も行っており、規制対応力と資本基盤が機関投資家から評価されている。サンフランシスコ、ニューヨーク、ポルト(ポルトガル)、シンガポールなどに拠点を置き、「Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)」、「GIC」、「Visa」、「Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)」、「KKR」などから出資を受け、シリーズD時点の企業価値は30億ドルを超える。

マウンテン・プロトコルは2024年に「Multicoin Capital(マルチコインキャピタル)」主導で800万ドルを調達し、マルチチェーン対応のUSDMを運営する。アンカレッジはマウンテン・プロトコルの専門性がリスク管理と規制遵守を補完すると評価し、ステーブルコインが伝統金融と仮想通貨ネイティブの双方に不可欠なインフラへ発展すると見込んでいるとみられる。マウンテン・プロトコル側は、透明性と安全性の設計思想がアンカレッジの高度なカストディ技術と結合し、機関ニーズに応える次世代ソリューションを構築できるとと評価している。

買収契約締結に伴いUSDMの新規発行は5月12日以降停止され、リワードは初回30日後から年率0%に変更される。一次ユーザーはマウンテンのプラットフォームで償還でき、その他の保有者には取引所での交換が推奨される。詳細は同社ドキュメントで案内される予定。なお、買収額は現時点で公表されていない。

ステーブルコインをめぐる制度整備と技術革新が進むなか、アンカレッジとマウンテン・プロトコルの統合は、デジタル資産のインフラとしての信頼性をいっそう高め、機関投資家のさらなる参入を後押しする可能性があるだろう。

関連:ブラックロック、仮想通貨カストディ業務にアンカレッジ・デジタルを追加選定

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フリーエコノミスト。仮想通貨歴は9年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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