USDe急落で業界古参が警告、「テラUST暴落と同じ構造的リスク」と分析

shoko-koyama
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暗号資産業界で長年活動するdフォース・ネットワーク創設者兼CEOのミンダオ・ヤン氏は11日、本日発生したUSDeの大幅デペッグについて警告を発した。同氏は同日のX投稿で、今回のUSDe暴落について「テラUST崩壊事件と類似点が多い」と分析し、ステーブルコイン市場の構造的リスクへの注意を呼びかけている。

USDe、0.65ドルまで急落しデペッグ発生

11日、世界第3位のステーブルコインであるUSDeが大幅なデペッグを起こし、バイナンスで一時0.65ドルまで急落した。これは本来1ドルで安定すべきステーブルコインとしては35%もの下落を意味する異常事態となった。

バイナンスでUSDeがデペッグ
出典:バイナンス

USDeは「合成ドル」として市場に投入され、現在5.5%の利回りを提供していたが、暗号資産市場全体の急落に伴い記録的な清算が発生した際にペッグを失った。

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「テラ暴落事件と類似点が多い」と分析

ヤン氏は投稿で「今回の暴落事件とルナ暴落事件の類似点は、大手取引所が非法定通貨ステーブルコインを高い担保価値比率の担保物として受け入れ始めたことにより、リスクが取引所間で浸透し始めたことだ」と分析した。

その具体例として「以前はUST、今回はUSDeだ」と明言し、両者の暴落メカニズムが酷似していることを指摘した。同氏は「『安定性』+高いステーキング利回りが多くの人を迷わせた」として、投資家が高利回りに惑わされた結果として今回の暴落が発生したと分析している。

非法定通貨ステーブルコインの2つの危険な手法を解説

ヤン氏は投稿の中で、非法定通貨ステーブルコインを担保物として導入する際の手法を2つに分類して詳しく説明している。

第1の手法として「高い担保価値比率(90%以上)を許可するが、借入限度額は設定せず、固定基準価格(例:1、またはUSDT/USDC価格)を設定する」方法を挙げた。これは「DeFi貸借プロトコルで一般的に行われる方法」だが、「この方法も反作用をもたらし、USTのようなデペッグが発生すると、プロトコルはすべての損失を引き受けなければならない」と警告している。

第2の手法については「市場価格(流動性リスク)を参照して評価し、より低い担保価値比率(50〜70%)を設定し、該当資産をボラティリティ資産として扱う」方法だと説明した。

「最も危険な組み合わせ」がリスクを拡大

ヤン氏は特に危険な状況として「最も精巧な組み合わせは市場価格を参照しつつ、同時に高い担保価値比率を許可すること。加えてCEX(中央集権取引所)自体に完全に開放されたアービトラージ環境がなく、アービトラージ効率が低いため、リスクがさらに拡大する」と指摘している。

さらに「LSD(リキッドステーキングデリバティブ)系資産も同様の問題に直面している」として、問題がUSDeに留まらず、より広範囲なリスクの存在を示唆した。

最後に同氏は「これら資産は実際にはすべて『安定性』の仮面をかぶった変動性資産だ」と結論づけ、見た目の安定性に騙されないよう強く警告している。

テラUST崩壊の教訓が再び現実に

2022年に発生したテラUST(テラUSD)の崩壊では約400〜500億ドルという巨額の損失が発生し、投資家に数十億ドルの被害をもたらした。わずか3日間で500億ドルが消失する事態となった。

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今回のUSDe暴落は、時価総額約120〜130億ドルを誇る世界第3位のステーブルコインにおいて、ヤン氏が指摘していた「安定性の仮面をかぶった変動性資産だ」としての本質が露呈した形となった。

ヤン氏は2013年から暗号通貨投資を開始し、2014年にはイーサリアムICOに参加した業界古参である。30以上のプロジェクトに投資してきた同氏の見解は、テラUSTの400億ドル損失という歴史的教訓を踏まえた分析として、市場関係者から注目を集めている。

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仮想通貨歴5年。ニュース記者歴3年。常に仮想通貨ニュースを追う。情報ソースを追究し正しい情報をわかりやすく伝えることに努めている。仮想通貨は下落するたび買い増すタイプで、主にステーキングで資産運用中。
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