BTCのプロトコルを変えずにスマートコントラクト実行
レイヤー1ブロックチェーンの「Sui(スイ)」は1日、今後数カ月以内にビットコインのレイヤー2ネットワーク「Stacks(スタックス)」が提供する1対1 BTC担保資産「sBTC」をサポートすると発表した。これにより、ビットコイン保有者は中央管理のカストディに依存せずに、スイの高速なDeFi(分散型金融)プラットフォーム上でビットコインを活用できるようになる。
スイ開発者のアデニイ・アビオドゥン氏は「ビットコインは長らく受動的な資産として扱われすぎてきた」と苦言を呈する。実際、2024年末時点でビットコインを活用したDeFiプロトコルのTVLはすでに65億ドルに達し、ビットコインをより積極的に運用したいという声が高まっている。今回の統合によって、約1.6兆ドルものビットコイン流動性が、本来の安全性を損なうことなく貸付・借入や取引など多彩なDeFi機会にアクセスできるようになる。利回りを得つつ“ビットコインの信用不要”の理念を曲げずに済むとなれば、ビットコイン愛好家にとっては狂喜乱舞の展開だ。
ビットコイン本体は保守的な設計であるがゆえ、高度なDeFiには不向きとされる。しかし、スタックスのようなレイヤー2はビットコインのプロトコルを変更せずにスマートコントラクトを実行し、ビットコインホルダーにレンディングやスワップなどの運用手段を提供する。これらの操作はビットコイン本チェーンのセキュリティで保護されるため、より高い信頼性が期待できる。スイ財団もスタックスのバリデータ運用に参加予定であり、本気度のあらわれだろう。
一方、スイは並列処理を活用した独自アーキテクチャにより、きわめて高いスループットと拡張性を備えた新世代のレイヤー1である。トランザクション処理が高速かつ低コストであり、DEX(分散型取引所)やレンディングなど多彩なDeFiアプリケーションが続々と登場し、エコシステムが急拡大している。実際、スイのTVL規模は上位チェーンの一角であり、そのうち1割以上がビットコイン由来の資産である。この高性能基盤と急成長を背景に、スイは、ビットコイン担保資産の活用先として「自然な選択肢」との評価を受けている。
だが、甘い蜜には毒がある。DeFiで一度バグやハッキングが起これば、巨額の資産が吹き飛ぶリスクがあり、ブリッジはたびたび攻撃の標的となってきた。sBTCは「ビットコインを生産的資産にする最も安全で分散化された方法」と謳われているが、複雑なしくみである以上、厳重な監査と慎重な運用が欠かせない。また、保守的な層の中には、ビットコインを他チェーンに預けること自体に抵抗を示す人々もいる。彼らの信頼を勝ち取るには、この統合の安全性と有用性を証明し続けなければならない。
経済的インパクトと技術革新が同時に詰まった今回の統合は、まさしく刮目に値する。ビットコインを高速チェーンで活用できれば、市場全体の流動性は大きく向上する。中央集権に頼らずチェーン同士が連携することは、DeFi本来の理想形であり、この動きは「デジタルゴールド」と「利回りを生むDeFi」の世界を橋渡しする一歩となるだろう。BTC-fiの未来に期待が膨らむ。