IMFへの事前協議なしに仮想通貨政策を発表
パキスタンがビットコインおよび人工知能(AI)関連事業に多大なエネルギー資源を投入する方針を発表したが、同国の財政支援を行うIMF(国際通貨基金)がこの決定に懸念を示していることが明らかになった。31日、地元メディアの「Samaa(サマー)」が報じた。
5月下旬、米ネバダ州ラスベガスで開催された「ビットコイン・ベガス2025」において、シャバズ・シャリフ首相の暗号資産(仮想通貨)アドバイザーであるビラール・ビン・サーキブ氏は、パキスタンが国家として初めてビットコイン準備金を創設したことを明かした上で、ビットコインのマイニングおよびAI関連のデータセンター向けに、2,000メガワット(MW)の電力を割り当てる計画を公表した。
しかし、この発表に対しIMFは強い懸念を示している。関係筋によれば、IMFは事前にパキスタン政府から本件について説明を受けておらず、仮想通貨の法的地位や電力資源の配分に関する明確な政策枠組みもまだ提示されていない状況だという。
パキスタンは経済の不安定さや外貨準備の脆弱性などを背景に、1958年以降、IMFと24回にわたって融資取り決めを結び、そのほぼすべてで実際に融資支援を受けてきた。直近では、2024年9月にIMF理事会が新たに70億ドルの融資枠を承認しており、現在は拡張融資制度(EFF)の下で政策協議が継続している。
IMFは現時点で公式コメントを控えているものの、事情に詳しい関係者は「IMFはEFFの枠組みにおいて、すべての主要政策は事前に協議されるべきという立場を崩していない」と述べた。加えて、電力料金設定や電力供給先の選定に関しても説明を求めており、今後は仮想通貨関連の電力割り当てを巡る個別協議が実施される見通しである。
デジタル経済への移行を国家戦略に据える姿勢は先進的であり、技術革新や投資誘致の観点から一定の意義があるだろう。しかし、制度面や資源配分の透明性に欠ければ、国際的な信用に悪影響を及ぼしかねない。特に、財政支援を受ける立場にある以上、国際機関との協調を重視しながら、段階的かつ法的根拠に基づいた実施が求められる。
関連:トランプ大統領、XRP、SOL、ADA含む仮想通貨戦略準備金を発表
関連:ルミス議員、戦略的ビットコイン準備金法案を再提出──100万BTC購入を提案