メローニ政権、42%から28%へ税率修正|EU規制を見据えた判断
Bloomberg(ブルームバーグ)の13日付報道によると、イタリア政府は暗号資産(仮想通貨)取引への増税案を大幅に見直す方針を固めた。ジョルジャ・メローニ首相率いる連立政権の一部であるLeague(同盟)が提出した修正案では、当初予定していた42%から28%に税率を引き下げる内容が盛り込まれている。現在の税率は26%である。
この修正案の重要なポイント:
- 2,000ユーロ未満の利益については非課税
- 損失の繰越控除を認める新制度の導入
- 現行の26%からの小幅な引き上げにとどめる
EUは年末に仮想通貨包括規制「MiCA」を導入する準備を進めており、これはEU初の包括的な仮想通貨規制となる。仮想通貨業界の幹部は、当初提案された42%の税率は高すぎるため、イタリアの競争力が他のEU諸国に比べて低下する懸念を表明していた。
イタリアの仮想通貨保有者は150のVASP(仮想資産サービスプロバイダー)を通じて取引を行っており、業界全体で27億ユーロ(約4,428億円)の売上を生み出している。前年比85%増という急成長を遂げる中での増税案見直しとなった。
また、イタリア国内の認可仲介業者を通じた仮想通貨保有者は130万人を超えており、人口5,900万人のうち少なくとも2%以上が仮想通貨に投資していることになる。
業界からは、過度な増税が技術革新を阻害し、人材や資本の国外流出を招くとの懸念が示されていた。特に、隣国スイスが仮想通貨のキャピタルゲイン課税を課していないことから、イタリアの競争力低下への警戒が強まっていた。
ジャンカルロ・ジョルジェッティ経済財務相は10月31日、この税率修正を支持する姿勢を示している。この修正案は今後、議会での審議を経て最終決定が下される見通しだ。
イタリアは、EUの財政ルールの復活を受けて、公的財政の改善に取り組んでいる。低成長と公的債務の拡大が組み合わさったことで、メローニ政権は厳しい決断を迫られている。
今回の仮想通貨税率上限の引き下げは、イタリアが国際的な仮想通貨市場において競争力を維持するための戦略的な取り組みと見なされている。政府は、税負担の軽減により投資家や企業を市場に誘致し、経済活動と技術進歩が促進することを期待している。
世界的な仮想通貨市場の進化が続く中、イタリアの決定は同様の規制措置を検討している他国にも影響を与える可能性がある。
関連:米Circle、EU規制に準拠したステーブルコイン・ライセンス取得|世界初
関連:中央・北・西ヨーロッパ、世界第2位の仮想通貨経済圏に浮上
情報ソース:ブルームバーグ
アイキャッチ画像:Freepikのライセンス許諾により使用