ビットコイン準備で米国債務が2050年までに最大36%削減|VanEck試算

木本 隆義
13 Min Read

VanEckの「BTCで米国債務36%減」説は本当か?

アメリカの投資運用会社「VanEck(ヴァンエック)」は21日(現地時間20日)、米国が戦略的にビットコイン準備金を保有することで、2050年までに債務を最大36%削減できるとの試算を発表した。

同社の試算によれば、ビットコインが年間25%、米国債務が5%ずつ成長すると仮定し、約42兆ドルの削減余地を見込むという。ビットコインの激しい値動きや政治的要因を考慮しても、同社は「長期的には十分に有効なシナリオだ」と強気の姿勢を示している。

背景:アメリカの債務拡大が深刻化

米国連邦債務は2050年にはGDPの2倍に達する可能性が指摘されるなど、増大の一途をたどっている。歳出の増加に見合うだけの税収が確保できていない現状を踏まえると、新たな財源確保や債務圧縮策が急務。そのなかで「ビットコインの保有による資産価値の上昇」が、財政再建の一手として注目を集めている。

ビットコインのポテンシャル

ビットコインは発行上限が定められており、インフレヘッジとしての機能を期待する声が根強い。過去10年で大幅に価値が上昇し、機関投資家も参入してきたことで、一定の信認を得たとみる向きもある。一方で、値動きが激しく暴落リスクも高い点が、国家戦略としての導入を躊躇させる要因となっている。

国家準備として導入した場合に考えられる影響

  • 価格上昇による債務圧縮
    ビットコイン価格が高騰すれば、保有資産が膨張し、債務返済に回せる余地が生じるという発想。
  • 米国の金融支配力維持
    ドル離れを模索する国が増えるなか、ビットコインを保有することでデジタル資産分野でも主導権を握る狙い。
  • 税収増の可能性
    取引課税を整備すれば、ビットコイン関連の税収拡大が見込まれる。ただし、実際に徴収システムを構築する難易度は高い。

反対意見と疑問

  • ニック・カーターの懐疑
    ビットコイン保有が本当にドルを下支えするか、確証が得られないと指摘している。
  • ピーター・シフの「USAコイン」構想
    ビットコインの代替として新たなデジタル通貨を発行すべきとの見解を提示。これが事実上のCBDC化に近いものであり、ビットコインの分散性とは異なる点が争点となっている。

採用メリットとリスク

メリット

  1. 高いリターンの可能性
    大規模に購入して価格が上昇すれば、国家債務問題を一気に緩和できる潜在力。
  2. 先行者優位
    他国に先駆けて国家レベルでビットコイン準備を確立すれば、デジタル通貨時代の競争力を確保できる。

リスク

  1. 大幅な価格変動
    市場のボラティリティが高いため、下落局面での損失は深刻になりかねない。
  2. 政治・規制面の不確実性
    議会や国民からドル信認低下の懸念が示されるほか、政策の継続性にも疑問。
  3. 技術的課題
    ウォレット管理とハッキング対策など、安全保障上のリスクへの対応が必須。

大胆な賭けか、見過ごせない選択か

ヴァンエックが提示するシナリオは、ビットコインの25%という年平均上昇率を前提とする点でかなり無謀だ。国債務が増大の一途をたどる米国にとって、「ビットコイン導入」という突飛な戦略も、視野に入れざるを得ない状況が迫っているのかもしれない。

実際に国家がビットコインを保有するには、政治的ハードルと大きなリスクが伴う。将来的にどちらへ振れるかは不透明だが、財政破綻を回避する試みとして、この議論が注目を集めていることは確かだ。

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アイキャッチ画像:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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JinaCoinのニュース担当記者。仮想通貨歴は8年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。主著『マウンティングの経済学』。来タイ12年。
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