トランプ米大統領が株式の過半数を所有するメディア企業「Trump Media and Technology Group(トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ:TMTG)」は26日、暗号資産(仮想通貨)取引所「Crypto.com(クリプト・ドットコム)」と戦略的提携を締結したと発表した。
Truth SocialとTruth+にCRO基盤の報酬システム導入
今回の提携により、TMTGはSNS「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」および動画配信サービス「Truth+(トゥルース・プラス)」にクリプト・ドットコムのウォレット基盤を統合し、ユーザーが活動に応じて獲得する「ジェム」を仮想通貨「Cronos(CRO)」に変換できる報酬システムを導入する。また、CRO残高を利用したサブスクリプション決済や、クリプト・ドットコム口座開設者へのトゥルース・プラス無料・割引提供も予定されている。
CROは、クリプト・ドットコムが発行する独自トークンだ。同取引所での手数料割引、ステーキングによるリワード獲得に利用されるほか、同社が開発するレイヤー1ブロックチェーン「Cronos Chain(クロノス・チェーン)」上でのガス代支払いにも使われる。さらに、DeFiやNFT、各種dAppsなど幅広いサービスで活用され、クリプト・ドットコムのエコシステムを支える基盤的なトークンとなっている。
また両社は購入契約を締結し、TMTGは発表時点におけるCROの時価総額の約2%に相当する、約1億500万ドル(約154億円)のCROを取得する。一方でクリプト・ドットコムはTMTGの普通株式5,000万ドル分を取得する。TMTGが取得したCROはクリプト・ドットコムのカストディサービスで保管され、ステーキングによる追加収益の確保が計画されている。
10億ドル規模のCROトレジャリー企業を設立
同時に、TMTG、クリプト・ドットコム、SPAC(特別買収目的会社)の「Yorkville Acquisition Corp.(ヨークビル・アクイジション:YORK)は、新会社「Trump Media Group CRO Strategy(トランプ・メディア・グループ・CRO・ストラテジー)」の設立に合意した。同社はCROを中心とするトレジャリー事業を展開する。
合併完了時には、同社は約10億ドル(約1,475億円)相当のCRO(発表時点のCRO時価総額の約19%相当)、2億ドル(約295億円)の現金、2億2,000万ドル(約324億円)のワラントに加え、YORKの関連会社から50億ドル(約7,379億円)の与信枠を確保する。この規模は、公開企業として初かつ最大のCROトレジャリー企業となる見込みだ。
このニュースを受け、CROは一時30%以上急騰した。
TMTGの大株主は現職の米大統領トランプ氏であり、関連会社を通じて過半数の株式を保有している。大統領が直接支配する企業が大規模な仮想通貨トレジャリー事業に参入することは、市場や規制当局の強い注目を集める。特にCRO取得の規模は市場全体に影響を及ぼし得るため、政治的判断と市場動向が交錯する局面となり、投資家や規制機関は今後の展開を注視せざるを得ない。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.65円)