トランプ関税で揺らぐドルの信頼ービットコインは恩恵を受けるのか

廣野倭佳菜
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IEEPA関税の影響、アナリストは米ドルの信頼低下を懸念

トランプ米大統領は1日、不法移民や合成麻薬フェンタニルの流入を理由に、メキシコとカナダに25%、中国に10%の高関税を賦課する大統領令に署名した。この措置は、国家の安全保障や経済面での緊急時に、大統領が緊急事態を宣言すれば、輸入や輸出などに規制をかけることができる「IEEPA=国際緊急経済権限法」に基づいている。

しかし、トランプ大統領は4日の関税発動を控える中、メキシコとカナダの両首脳と協議を行い、国境警備を強化することで合意に達した。その結果、カナダへの関税発動を少なくとも30日間、メキシコへの関税発動を1カ月猶予することを表明した。高関税を交渉の材料として相手国から譲歩を引き出す「ディール外交」が展開されており、この動きが中長期的には米ドルの信頼性を揺らがせ、ビットコインの上昇につながる可能性があるとの見解をアナリストが示している。

関税政策がドル離れを加速し、ドル安を引き起こす可能性

暗号資産(仮想通貨)メディア「The Block(ザ・ブロック)」が5日に公開した記事の中で、欧州最大級のデジタル資産投資会社「CoinShares(コインシェアーズ)」のリサーチ責任者ジェームズ・バターフィル(James Butterfill)氏は、「世界貿易に占めるドルのシェアは低下しており、長期的に米ドルの基軸通貨としての地位も揺らいでいる」と警鐘を鳴らした。また、「IEEPAのような規制をさらに課せば、国家の通貨を不安定にし、ビットコインがより魅力的に見えるようになる」と述べている。

今回のIEEPAの措置は、米ドルの信頼性や優位性の低下を加速する恐れがあるとされる。現在、ロシアや中国を筆頭に、ドル依存を脱却する動きが顕著になっている。特にBRICS諸国は新通貨創設を提案するなど、脱ドル化を目指す動きを進めている。BRICSは、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカに加え、イラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦(UAE)も構成国となっている。

こうした動きに対し、トランプ大統領は1月31日、「BRICS諸国が米ドルに取って代わる新たな通貨を創設すれば、100%の関税を課し、米国市場から締め出す」と警告。さらに、「米ドルに代わる通貨を支持する国も同様の制裁を受けることになる」とし、脱ドル化を強く牽制した。

米ドルは世界の基軸通貨として、貿易や国際決済に広く利用されている。仮に他国の国際取引でドル離れが進めば、ドルの地位が低下し、ドル安が進む可能性がある。バターフィル氏は、長期的に米ドルの支配力が低下すれば、ビットコインの重要性がさらに高まる可能性があると指摘している。

米ドル、リスクオフのヘッジとしての優位性が揺らぐ

ザ・ブロックが公開した同記事において、仮想通貨デリバティブトレーダーのゴードン・グラント(Gordon Grant)氏もまた、IEEPAの措置がドルの潜在的な価値の低下を招く危険性について言及した。「ドルはまだリスクオフの避難所として振る舞っているが、今回のIEEPAの措置で明らかになったリスクを考えると、中長期的に人々は米ドルを保有し続けるべきなのか」と疑問を投げかけ、「緊急経済措置と貿易政策を綯い交ぜにすることで、アメリカの安定した経済ガバナンスに複雑なシグナルを送るリスクがある」と述べた。さらに、「これらの動きは、ビットコインなどの自己主権的でポータブルなデジタル資産の価値を押し上げる可能性がある」と指摘した。

関税を巡るニュースによって投資家の不安感が広がり、リスクオフの動きが強まったため、直近の相場で仮想通貨が大幅に下落した。しかし、より長期的な視点では、関税政策が米ドルの信頼性を低下させることで、ビットコインの重要性が高まる可能性があるとの見解が示されている。関税を巡る今後の動向は市場に大きな影響を与える可能性があり、トランプ大統領や各国の要人の発言に注目が集まっている。

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仮想通貨やFX、AI系について執筆活動をするWebライター。海外留学中に為替をはじめとした金融マーケット情報に興味を持ち、2023年に仮想通貨とFX業界に参入。市場動向を常に追いかけ、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を両方取り入れた市場解析やシナリオ構築が得意。
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