米ビットコイン投資企業ストラテジー(旧マイクロストラテジー)の創業者兼会長マイケル・セイラー氏は、ドバイで開催された「Binance Blockchain Week」で、自社の株価とビットコイン純資産価値(NAV)の乖離を利用した、具体的なビットコイン売買基準を明らかにした。
ビットコインを企業資本として扱う具体的手法を公開
セイラー氏は、同社がどのように株主価値を創出しているかについて、明確なトレード手法を明かした。同氏によると、自社の株式が、保有するビットコインの純資産価値(NAV)を上回る「プレミアム」状態で取引されている場合、積極的に株式を売却するという。
この戦略により、同社は市場から高い評価額で資金を調達する。セイラー氏は、こうして調達した資本を、年率47%で成長すると同氏が見込むビットコインへ投資することで、株主価値を高められると説明した。
一方で、株価がNAVを下回る「ディスカウント」局面での対応についても具体的に言及した。「もし株式がビットコインの価値を下回って取引されている場合、我々はビットコインのデリバティブを売却するか、あるいはビットコインそのものを売却し、その資金で株式を買い戻す」と述べた。
これは、株価が割安な局面を逆に利用し、ビットコイン資産を一部売却して割安な自社株を取得する戦略だ。株価がプレミアム時は株式を発行してビットコインを購入し、ディスカウント時はビットコインを売却して株式を買い戻すことで、常に有利な条件で資本を最適化する方針を示した。
「バッテリー」としての米ドル準備金
さらに同社は、こうした市場変動に耐えうる仕組みとして、14億4,000万ドル(約2,237億円)の米ドル準備金を調達したことを明らかにした。セイラー氏はこの準備金を「バッテリーのようなもの」と表現した。
この準備金があることで、市場が合理的でない場合や閉鎖されている場合でも、株式やビットコイン、デリバティブを売却することなく、資金需要に対応できる体制を21ヶ月分確保できるという。「息を止めていられる期間」を確保した形だ。
ストラテジー社がビットコインを基盤として信用商品を発行している点は、暗号資産(仮想通貨)の活用法が「値動きへの投機」だけでなく、「利回りを生む仕組みへの応用」へと広がりつつあることを示している。企業が暗号資産を用いて安定的な収益源を構築しようとする動きは、暗号資産市場の利用領域が拡大している証左といえる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=155.3円)




