zkSync L2「LaChain」導入で南米市場の取引コスト削減&高速化
南米を代表する暗号資産(仮想通貨)プラットフォーム「RipioApp(リピオアップ)」は7日、zkSync(ジーケーシンク)を基盤とするレイヤー2チェーン「LaChain(ラチェーン)」の導入を進めていることを明らかにした。
南米8ヶ国、1,900万人以上のユーザーに「高スループット」かつ「低手数料」な取引環境を提供し、インフレや金融不安下でも資産を保全できる手段を拡充するのが狙い。
「インフレ」と「金融インフラ不足」という南米の深刻な課題
南米諸国、なかでもアルゼンチンやベネズエラなどにおける「高インフレ」と「金融インフラの未整備」は、深刻な課題として顕在化している。
銀行口座を持てない人々が多い背景には、従来の金融システムの脆弱さがある。ビットコインやステーブルコインが“インフレヘッジ”の手段として人気を集めてきたのも、この構造的問題に対応するためだった。
だが、ビットコインやイーサリアムは取引手数料(いわゆるガス代)の高さやネットワーク混雑に起因する処理速度の低下が指摘されてきた。その解決策として注目を集めているのが、「zkSync」というゼロ知識ロールアップ技術である。トランザクションをまとめて処理し、ネットワークの負荷と手数料を抑制するこの技術は、南米のように高頻度取引のニーズが強い市場に大きな恩恵をもたらすと期待されている。
RipioAppがzkSync L2を選択する理由
リピオアップがzkSyncを基盤としたレイヤー2チェーン「LaChain」を導入する計画を打ち出したことは、地域の仮想通貨シーンにとって大きな転換点となり得る。
狙いは明白だ。
イーサリアムに比べ大幅に「安価」かつ「高速」な取引環境を整えることで、ユーザーが手数料の高さを気にすることなく、より活発に仮想通貨を利用できるようになる。
さらに注目すべきは、「Mercado Pago(メルカド・パゴ)」(“南米版PayPal”と称される)のユーザーが、ブラジルレアルで保有する資金をMeli Dollarステーブルコインに手数料ゼロで切り替えられるようにする取り組みだ。インフレ懸念が根強い南米市場において、法定通貨からドルに相当する資産へ乗り換える需要は高く、こうした施策による利用者増は必至とみられる。
LaChainがもたらす潜在的インパクト
リピオアップが開発するLaChainは、zkSyncのElastic Network(エラスティックネットワーク)に参加し、同じzkSyncスタックを用いるチェーンとの相互運用を実現する見通しである。このネットワーク設計により、LaChain上で生まれるプロジェクトやトークンは、ほかのzkSync系ブロックチェーンともスムーズに接続される可能性が高い。
南米には、すでにブロックチェーン技術に関心を寄せるスタートアップや企業が数多く存在する。LaChainを基盤に活用すれば、「高スループット」かつ「低コスト」な取引が可能になり、地域の開発者コミュニティが活性化するだろう。結果として、分散型金融(DeFi)やNFT関連サービスなどの新興分野が次々と登場し、仮想通貨の普及サイクルが一段と加速するシナリオが想定される。
まとめ:南米仮想通貨市場の未来
南米は、経済不安や高インフレなど多くの困難を抱えている半面、仮想通貨や分散型金融(DeFi)技術の“実験場”としてはまことに有望だ。イーサリアムやビットコインは相対的に手数料面での課題があったが、リピオアップによるLaChain構想とzkSync技術が、それらを大きく改善する可能性がある。
エルサルバドルのビットコイン法定通貨採用や、アルゼンチンでのステーブルコイン取引急増など、南米の仮想通貨シーンは激動期にある。それだけに、高速かつ低コストなL2チェーンが実装されれば、さらなる普及と市場拡大は十分に見込める状況だ。リピオアップの動向は、今後も注目に値するだろう。
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