DEX統合&MEV保護で機能強化へ
暗号資産(仮想通貨)取引所の「OKX(オーケーエックス)」は19日、イーサリアム開発を牽引する「Consensys(コンセンシス)」との提携を発表した。この提携は、世界中の数百万人におよぶトレーダーに新たな取引機会と、より高い安全性を提供する可能性がある。
今回の提携は、Web3業界を代表する両社がおたがいの強みを持ち寄り、ユーザー体験の向上と業界が抱える根本的な課題解決を目指すものである。言うなれば、競合が馴れ合うのではなく、高次元で協力し合うという新たな関係性の幕開けだ。
この提携により、OKXの自己管理型ウォレット「OKX Wallet(オーケーエックス・ウォレット)」および、コンセンシスが手がけるウォレット「MetaMask(メタマスク)」の双方に対し、新たな機能が統合される。
今回の協力関係は、大きく分けて二つの柱から成り立っている。
第一に、OKXが誇る高性能な「DEX API」が、コンセンシスのメタマスクに統合される。OKXのDEX APIは、複数のブロックチェーンにまたがる分散型取引所(DEX)を集約する、包括的な取引インフラである。これにより、メタマスクのユーザーは、OKXのDEXアグリゲーターを新たな流動性の供給源として利用可能になる。
具体的には、500を超えるDEXへのアクセスが拓かれ、業界でもトップクラスである100ミリ秒未満という驚異的な応答速度で取引の最適解を探し出す。すなわち、ユーザーはより深い流動性を通じて、これまで以上に有利な価格で取引できる可能性を手に入れる。さらに、取引時に発生しがちな「スリッページ」と呼ばれる価格のズレや、取引コストそのものを削減する効果も期待される。たとえるなら、「よく行く定価販売のコンビニに、常設の特売品コーナーが新設されたようなもの」と言えば、そのインパクトが伝わるだろうか。
そして第二に、今度はコンセンシス側からOKXウォレットに対して、強力な機能が提供される。それが、「SERVO(サーヴォ)」と呼ばれるMEV(最大抽出可能価値)保護ソリューションだ。MEVとは、ブロックチェーン上で行われる取引の順番を恣意的に操作することで、第三者が不当に利益を得るしくみを指す。ユーザーにとっては、知らぬ間に資産をかすめ取られる「隠れコスト」に他ならない。
今回、OKXウォレットはこのサーヴォを統合することで、こうした搾取的な動きからユーザーを保護する機能を大幅に強化する。興味深いことに、OKXはコンセンシスのサーヴォを自社製品に組み込む、初の主要な外部パートナーとなった。これは、OKXがユーザーの資産保護をいかに重視しているかの証左といえよう。
今回の提携は、単なる機能統合に終わるものではない。両社は声明の中で、広範な戦略的パートナーシップの第一段階に過ぎないことを明言している。今後の協力分野として、イーサリアムのスケーリングソリューションとして注目される「Linea(リネア)」エコシステムの共同開発が予定されているという。両者の今度の動向を見守りたい。
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