農林中央金庫(農林中金)グループが、デジタル証券(セキュリティトークン、ST)事業に参入する。農林中金の100%子会社である農中信託銀行は5日、ケネディクスやSBI証券、Progmat(プログマ)などと協業し、グループ初の不動産ST案件の組成を目指すと発表した。
農中信託銀行が管理、SBI証券が引受・販売
農中信託銀行は、STの発行に用いる受益証券発行信託を受託する。各社の役割は次のとおり。
- 農中信託銀行:信託財産と、プログマの基盤上の受益権原簿を管理
- ケネディクス:対象不動産の供給と案件の組成
- KDX STパートナーズ:ケネディクスのグループ会社として、組成後の運用と投資家への情報開示を担当
- SBI証券:STの引受・販売
- プログマ:農中信託銀行とSBI証券にProgmat SaaSを提供
Progmat SaaSは、原簿管理やカストディ(資産保管・管理)などを支援するサービスだ。利用する金融機関は、自社サーバーにブロックチェーンのノードを構築せずに業務を開始できるという。
プログマの齊藤達哉最高経営責任者(CEO)は5日のX投稿で、12月に初号案件を開始する予定だと説明した。今後は対象資産や販売チャネルの多様化も視野に入れるとしている。
各社は今回の協業を幅広い市場参加者に開かれたものと位置付け、今後も多様なパートナーとの対話や協業を続ける方針だ。
農中信託銀行は2025年4月、あおぞら銀行、ケネディクスとともにプログマへの出資を発表した。同行は当時、ブロックチェーン技術による金融環境の変化への対応が必要だと説明していた。
農中信託銀行が見据える対象は、不動産にとどまらない。同行は、多様な金融商品や農林水産業に由来する非金融資産のデジタルアセット化などを通じ、中長期的には系統団体・組合員を含む投資家に新たな投資機会を提供する方針だ。
国内ST市場が拡大、案件残高は約9,104億円に
プログマの集計によると、国内のST案件残高は10月末時点で約9,104億円となり、2025年末の約5,831億円から約3,273億円増えた。発行累計額も約3,003億円から約4,673億円に増加し、案件累計数は75件から102件に伸びている。
| 国内のST市場 | 2025年末 | 2026年10月末 |
|---|---|---|
| 案件残高 (資産総額ベース) | 約5,831億円 | 約9,104億円 |
| 発行累計額 | 約3,003億円 | 約4,673億円 |
| 案件累計数 | 75件 | 102件 |
※金額が公開された私募案件と発行予定の公募案件を含む。案件残高は各案件の資産総額の合計で、償還済み案件は0として集計。
プログマの基盤は、国内ST市場でも広く利用されている。同基盤を使った案件は、10月末時点で国内の発行累計額の62%、案件累計数の49%を占める。
ケネディクスとKDX STパートナーズは、不動産STを不動産投資信託(REIT)や私募ファンドに次ぐ「第三の事業の柱」に育てる方針だ。両社は2030年までに、市場全体で2.5兆円の不動産がST化されることを目指すとしている。
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