アートとWeb3が融合したNFTゲーム
ニューヨークのメトロポリタン美術館は23日、ブロックチェーンを活用したゲーム「Art Links」をリリースした。
このゲームは、アートとテクノロジーを融合させる「TRLab」との共同開発によるもので、美術館の収蔵品を用いた独自の学習体験を提供する。プレイヤーは、異なる美術作品同士のつながりを発見することでNFTバッジを集め、最大500点のメトロポリタン美術館関連の賞品を獲得するチャンスを得られる。
「Art Links」の開始は、近年注目を集めるデジタルアートとWeb3の潮流を象徴する出来事である。一部でニューヨーク・タイムズ紙の人気ゲーム「Connections」との類似性が指摘されているが、「Art Links」は単語のつながりではなく、アート作品同士の関連性を模索する点でオリジナリティを発揮している。テーマや歴史、素材といった作品固有の要素を基軸に、ゲーミフィケーションを通じた美術史の学習機会を創出する点が特徴的である。
NFTバッジは、プレイヤーがゲーム内で収集できるデジタルアイテムとして位置づけられており、従来の美術館にはない“コレクション欲”を刺激する点もポイントが高い。この新たなゲーム体験は、アートを通じた知的好奇心の喚起という点で大きな差別化要素を備えている。
ここ数年、多くの美術館や博物館がデジタル戦略を強化してきた。オンライン展示やライブ配信ツアーなどが普及する中、メトロポリタン美術館はさらに一歩進んでWeb3技術を採用したわけである。
NFTという切り口は、若年層を中心に注目度の高いテクノロジーであり、美術館への新規来館者を呼び込む呼び水となり得る。チケット購入や時間指定といった従来の敷居を下げつつ、ゲームにより自然な形でコレクションの魅力を体感させる仕組みは、新たなファンの獲得に効果的だろう。
「Art Links」では、無料で獲得できるNFTバッジに加え、有料トークンを購入できるしくみも導入されている。暗号資産(仮想通貨)とクレジットカード双方に対応し、ブロックチェーン基盤はCoinbase(コインベース)のL2「Base(ベース)」を採用するなど、システムの安定性にも配慮しているようだ。
一方で、一部ではブロックチェーン市場が冷え込んだ際のリスクを指摘する声もある。NFTの価値が大幅に変動したり、利用者の興味が急速に薄れたりする可能性がある。とはいえ、美術館側はあくまでゲームを通じたアート体験を主眼に置き、デジタルグッズは付加価値と位置づけることで、リスクの分散を図っていると推察される。
「Art Links」の最大の利点は、アートの敷居を下げることにある。毎週更新されるテーマ(例:ハーレムを題材にした作品、素材を意外な方法で用いた作品など)を軸に、プレイヤーは作品の背景や制作手法をゲーム感覚で学べる。ブロックチェーン導入が注目される一方、真に重要なのは「作品背景の学習」と「コレクションへの理解」を深める機会となる点である。NFTが美術館のブランド力や教育的役割の向上に直結する可能性は大いにある。古典的な芸術に最新のテクノロジーを介在させることで、新たな体験価値を求める層に対し、強力なアピールとなるだろう。
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