界王拳 ∞ 倍(無限大)の衝撃
分散型取引所(DEX)「InfinityPools(インフィニティプールズ)」は17日、Base(ベース)上でメインネットをローンチした。このプラットフォームは、トレーダーに無制限のレバレッジと清算リスクを回避する手段を提供し、DeFi業界に新たな可能性を提示している。
「インフィニティプールズ」は、従来の取引所の常識を覆す存在だ。
従来の取引所では、レバレッジ取引は「マージントレード」として提供されるのが一般的だ。トレーダーは担保(マージン)を差し入れ、資産を借り入れてポジションを拡大するが、この方法には清算リスクが伴う。担保割れが生じそうになると、清算ボットや価格オラクルが起動し、ポジションが強制終了される。また、流動性が低い資産では、ポジションを即座に売却することが困難であり、これがレバレッジ倍率の上限を設定せざるを得ない要因にもなっている。
一方で、「インフィニティプールズ」の最大の特徴は“清算が不要”であるという点だ。しくみの鍵となるのは、「AMM(自動マーケットメイカー)の集中流動性そのものを借りる」という発想だ。これにより、単なる資金ではなく、「特定の価格帯で売買できる権利」を借りる形となり、損失を担保部分に限定できる。この構造により、清算ボットや価格オラクルを介した強制処分は発生しない。
このしくみにより、理論上はほぼ無限大のレバレッジを実現できる。しかし、レバレッジ倍率が高くなるほど、わずかな価格変動で担保が失われるリスクも増大するため、トレーダーは十分な注意が必要である。
“清算リスク回避”と聞くと「損失そのものを回避できる」と誤解されがちだが、実際には損失がゼロになるわけではない。インフィニティプールズの構造はオプション的な性質を帯びており、流動性を借りる際には金利やプレミアムの支払いが発生する。特にレバレッジ倍率を高く設定した場合、そのコストはさらに増加し、価格下落時には担保そのものが失われるリスクもある。トレーダーはこれらの費用とリスクを十分に理解し、慎重に見極めることが重要である。
清算ボットやオラクルへの依存がない点は革新的だが、「無償かつ完全に安全」が手に入るわけではない。あくまで“強制的な清算”が発生しないしくみであることを正しく理解すべきだ。
インフィニティプールズでは、流動性提供者(LP)が自らの流動性を“貸し出す”形を採用している。LPはトレーダーから金利や手数料を受け取ることで収益を得られるため、魅力的な投資機会といえる。だが、集中流動性を前提としたしくみゆえに、市場のボラティリティが高い局面では想定外のポジション利用が発生する可能性があり、そのリスク管理能力が問われる。
さらに、インパーマネントロス(IL)のリスクや、市場急変時の流動性変動への対応が、プロトコルの課題となる。インフィニティプールズのようなAMMとオプションのハイブリッド型プロトコルが、いかに安定的なリターンと安全性を両立するのか、LPにとっては注意深い観察が続くだろう。
インフィニティプールズは、従来の「担保割れによる強制清算」というしくみを完全に排除し、AMMの集中流動性を借りることで無制限のレバレッジを可能にする、きわめて斬新なプラットフォームである。その一方で、担保が少ないほどリスクが高まる点や、金利・プレミアムなどのコスト負担が避けられない点は、トレーダーと流動性提供者の双方が注意すべき課題である。インフィニティプールズは、DeFiの新時代を切り開く可能性を秘めているが、投資家には常に冷静かつ十分な知識を備えた判断が求められる。
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