Hyperliquid、JELLY緊急デリストの舞台裏──理念か安全か、分散型金融の試練

JinaCoin編集部
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損失は回避も、分散型の理念と信頼性に課題

分散型取引所(DEX)「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」は27日、暗号資産(仮想通貨)「JELLYJELLY(ジェリージェリー、以下JELLY)」のパーペチュアル契約(永久先物取引)をプラットフォームからデリスト(上場廃止)したと発表した。この措置は、疑わしい市場活動の証拠が確認されたことを受け、バリデーターの投票により決定された。

Hyperliquidで何が起きたのか?

26日22時から23時(日本時間)にかけて、あるトレーダーがJELLYのショートポジションを取った後、証拠金を引き上げることで意図的な清算を引き起こした。これにより、流動性供給メカニズムであるHyperliquidity Provider(以下HLP)は、約450万ドル(約6.7億円)相当のJELLYのショートポジションを一時的に抱える形となった。

HLPが大規模なショートポジションを請け負った直後、別のアドレスがJELLYを買い戻して価格を吊り上げる動きに出た。一連の取引により価格が急変動し、HLPは過去24時間で約1,200万ドル(約18億円)に及ぶ一時的損失を計上した。その後、ハイパーリキッドは約3億9,200万JELLY(約372万ドル)を0.0095ドルで決済。損失を出すことなく約70万ドル(約1億円)の利益を確保している。

ブロックチェーンセキュリティ企業「Three Sigma(スリーシグマ)」は26日、「JELLYの価格がこのまま上昇を続け、時価総額が7億ドルに達した場合、HLPの金庫自体が消し飛ぶ可能性がある」と公式Xで警告。投資家によるパニック的な資金引き出しが加速するリスクがあるとして、極めて危険な状況にあることを強調した。

これを受け、ハイパーリキッドの運営チームはネットワークの健全性維持を目的として、JELLYのパーペチュアル契約の上場廃止を決定。ユーザーの意思にかかわらずポジションを強制決済し、リスクの切り離しを図った。

ただしこの一方的な対応は、従来のDEXが掲げてきた「非中央集権的で中立的な市場提供」という理念と相反するものでもある。運営チームは「疑わしい市場活動からネットワークを守るための緊急措置だった」と正当性を主張している。

なお、今回の措置によって損害を受けたユーザーのうち、「不正取引に関与していないアドレス」には、ハイパーリキッドの開発を支援する「Hyper Foundation(ハイパー財団)」から補填が行われる予定だ。補填はオンチェーンデータに基づき、今後数日以内に自動的に実施され、ユーザーによる申請は不要としている。

Binance・OKX関与の憶測が広がる

大手仮想通貨取引所「Binance(バイナンス)」および「OKX(オーケーエックス)」は27日、JELLYのパーペチュアル契約の上場を発表した。奇妙なのは、この発表がハイパーリキッドによるJELLYのデリストと強制決済が行われる以前に出された点だ。

さらに、オンチェーン分析家のZachXBT氏は公式Xにて、今回の一件に関与したとされる複数のウォレットアドレスを公開。これらのアドレスがバイナンス経由で資金を調達していたことを指摘した。

この投稿がバイナンスやOKXによる直接的な関与を示すものではないが、こうした背景からSNS上では、両取引所が一連の騒動に関与していたのではないという憶測が拡散した。すでに投資家の間では「ハイパーリキッド vs CEX(中央集権型取引所)」という構図が仕上がっているようだ。

Hyperliquidからの資金流出が加速

ブロックチェーン分析プラットフォーム「Parsec(パーセック)」が提供するデータによると、ハイパーリキッドではJELLYの清算以降、純流入を上回る資金流出が記録された。ピーク時には3,700万ドル(約55億円)を超える流出が観測され、投資家による資金退避の動きが一時的に加速したことが確認されている。

Hyperliquidの流入・流出フロー
出典:Parsec

強制的なデリストと決済という手段は、短期的なリスク遮断としては一定の効果がある一方で、分散型金融が掲げる理念を損なう危険も伴う。今後このような事態を回避するには、価格急騰時の自動リスク制御やリアルタイムモニタリングの強化が不可欠だ。緊急時こそ、透明性と一貫性が求められるという原則を、改めて業界全体が再確認すべき時期に来ている。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=150.07円)

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