国土交通省は9月3日、宅地建物取引業者がマネー・ローンダリング(資金洗浄)の疑いを届け出る際の目安となる「疑わしい取引」の参考事例の改定案を、不動産業界6団体への事務連絡で示した。暗号資産(仮想通貨)を用いた取引の希望を新たな事例に加え、事例は現行の21項目から44項目に増える。同省は、改定後のチェックリストを10月をめどに通知・施行する予定としている。共同通信が18日に改定案の内容を報じた。
国交省の改定案、暗号資産での取引を「現金の使用形態」の事例に追加
改定案では、「第1 現金の使用形態に着目した事例」の5番目に「暗号資産を用いた取引を希望する場合」が【新規追加】として入った。同じく新たに加わった4番目は、高額な現金取引などの場合で「金融機関を介さない取引を希望する場合」だ。
国交省のサイトで公開されている現行のチェックリストは21項目で、暗号資産に触れた項目はない。改定案は分類も見直し、「外国との取引に着目した事例」を新設した。
| 分類 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 現金の使用形態に着目した事例 | 2 | 5(暗号資産での取引の希望などを追加) |
| 真の契約者を隠匿している可能性に着目した事例 | 5 | 9 |
| 取引の特異性(不自然さ)に着目した事例 | 5 | 8 |
| 契約締結後の事情に着目した事例 | 2 | 3 |
| 外国との取引に着目した事例 | なし | 2 |
| その他の事例 | 7 | 17 |
| 合計 | 21 | 44 |
外国との取引では、資金洗浄・テロ資金供与対策に非協力的な国・地域などに拠点を置く契約者や、そうした者と関連する可能性がある契約者との取引を挙げた。その他の事例には、取引の目的や資金の源泉に合理的な理由が認められない外国の重要な公的地位にある者(外国PEPs)との取引なども加わった。
連絡先の変更にも着目する。登録した電話番号やメールアドレスが過去に不審と判断したものと同じ場合や、非対面取引で電話番号などが同じタイミングで変更されるなど、なりすましが疑われる場合も事例に入った。
改定案は、各事例について、疑わしい取引に該当しない明確な根拠があるなど合理的な理由がある場合は、届け出の対象外としている。
疑わしい取引は1つでも該当すれば届け出、4月には4省庁が暗号資産で要請
国交省は2月19日付の事務連絡で、チェックリストに1つでも該当する場合や、該当するか判断に迷う場合は届け出るよう、判断基準を示している。
9月3日付の事務連絡では、届け出たうえで契約を結んでも犯罪収益移転防止法の違反にはならず、自社の判断で契約に至らなかった案件も届け出る必要があるとの解釈を示した。
暗号資産を使った不動産取引をめぐっては、国交省、金融庁、警察庁、財務省が4月28日、不動産業界6団体と日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)に連名で要請を出している。要請は、無登録の暗号資産交換業者を利用しないことや、取引時確認を厳格に行い、疑わしい取引を届け出ることなどを求めた。
要請は外為法上の報告義務にも触れた。海外から3,000万円相当を超える暗号資産を受け取った場合や、非居住者が国内の不動産を取得した場合には報告が必要で、不動産の取得は4月1日以降、目的を問わず報告の対象になっている。
国交省のサイトによると、日本は2021年8月に公表された金融活動作業部会(FATF)の第4次対日相互審査で、宅地建物取引業者などのマネロン等リスクの理解は低いレベルにとどまると評価された。国内の暗号資産に関する規制の動きは、JinaCoinの暗号資産の規制トラッカーでまとめている。
