イーサリアム、実現価格割れで「買い場」到来か──オンチェーンデータが示唆

伊藤 将史
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市場価格が実現価格を下回り、長期的な底値圏に?

オンチェーンアナリストのKriptolik氏は8日、現在のイーサリアム(ETH)が、歴史的に見て過小評価された水準で取引されている可能性があると指摘した。

Kriptolik氏の見解は、暗号資産(仮想通貨)市場のオンチェーンデータを提供する分析プラットフォーム「CryptoQuant(クリプトクワント)」に投稿されたものだ。同氏はクリプトクワントの認証済み著者として記事を執筆している。

Kriptolik氏の見解は、「実現価格(Realized Price)」と市場価格を比較して、導き出されたものだ。

実現価格とは、ブロックチェーン上で各仮想通貨が最後に移動(送金)された時の価格に基づいて、そのコインの市場価値を算出する指標だ。たとえば、最後に取引されたときの価格が10万円だった1 ETHは、現在の市場価格に関係なく10万円と評価される。このような評価をすべてのETHについて行い、それらを合算して循環供給量で割った平均値が実現価格である。

出典:CryptoQuant

図は、イーサリアムの市場価格(グレー)と実現価格(オレンジ)の推移を示している。直近のデータでは、イーサリアムの市場価格が実現価格を明確に下回っていることがわかるだろう。

Kriptolik氏によれば、実現価格はテクニカル的に重要な水準であり、市場価格が実現価格を上回っている間は「強力なサポートライン(下値支持線)」として機能し、下回った場合は「強力なレジスタンスライン(上値抵抗線)」になるという。「市場価格が実現価格を下回ると、ほとんどの保有者は突然含み損を抱えることになる。特に現在のように市場の恐怖と不確実性が高まっている局面では、これがパニック売りを引き起こす要因となる」と同氏は述べた。

さらに、実現価格を下回るような下落は、「主要な下降トレンドの終盤に発生することが多い」とも指摘した。そのうえで、「過去のデータを見ると、イーサリアムの市場価格が実現価格を下回るたびに、長期的な底値圏と重なるケースがよくあった。これらの期間の後には一貫して力強い回復が見られ、長期投資家にとっては戦略的な買い増しのポイントとなっている」と、下落後の展開を示唆した。

なお、図で実現価格を下回った2020年3月頃は、新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が混乱し、仮想通貨市場でも大暴落が巻き起こったタイミングである。

以上を踏まえて、Kriptolik氏は「イーサリアムが実現価格を下回っている現在の状況は、短期的には市場全体のパニック状態を反映しているが、より大きな視点で見ると、歴史的に過小評価されたゾーンで取引されている可能性があることを示唆している」と結んだ。

直近の仮想通貨相場はトランプ関税などのニュースによって、激しい値動きとなっている。過去の値動きがそのまま将来にも当てはまるとは限らないが、Kriptolik氏の分析は現在のイーサリアム価格を俯瞰的に見る際の参考になるだろう。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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