イーサリアムに強い資金流入、ビットコインは対照的に流出
資産運用会社「CoinShares(コインシェアーズ)」は9日、前週(6月3~7日)の暗号資産(仮想通貨)ETP(上場投資商品)への純流入額が2億2,400万ドルにとどまり、「7週連続の流入」という記録は維持されたものの、流入ペースは鈍化したと伝えた。
今回の報告によれば、累積7週間の流入総額は110億ドルを突破。それ自体は過去最高ペースだが、直近では米連邦準備制度理事会(FRB)金融政策への不透明感が続くなか、投資家が慎重な姿勢を取ったと見られる。実際、地域別には米国が1億7,500万ドル、ドイツが4,780万ドル、スイスが1,570万ドルなど順調だった一方、香港は1,460万ドルの流出に転じ、記録的な買い越し局面が一息ついた。
銘柄別の明暗も鮮明だ。イーサリアムは2億9,640万ドルを呼び込み、7週累計で15億ドル超に拡大。運用資産全体に占める割合は10.5%へ回復し、昨年11月の米大統領選直後以来となる強気相場を再現した。一方、ビットコインは5,650万ドルの流出で二週続落。興味深いことに、ビットコイン価格の下落に賭ける『ショートビットコイン』商品からも資金が流出しており、市場が一方向に傾いたわけではなく、やや複雑な心理状況がうかがえる。
アルトコイン勢は小休止だ。Sui(スイ)が110万ドルの小幅流入を確保したものの、XRPは660万ドルの流出で三週続落。アルトコインへの関心は限定的で、資金が主要銘柄に集中している可能性がある。
直近の資金流入の鈍化は、あくまで政策不透明感に起因する“間合い取り”との見方が多い。米消費者物価指数(CPI)の発表とFRB会合が10日後に控えるなか、機関投資家はリスク管理を優先しているものの、仮想通貨市場への関心自体は根強く、流動性資産としての側面に注目する声もある。マクロイベント通過後にスタンスが再び強気へ傾くかどうか──次週の数字が、市場の行方を示す最初のシグナルとなりそうだ。