ガスレスDEX「CoW Swap」がアバランチに対応──MEV対策&高度注文形式を提供

木本 隆義
15 Min Read

CoWプロトコル導入でアバランチ開発支援を強化

分散型金融(DeFi)インフラを開発するプロジェクト「CoW DAO(カウ・ダオ)」は24日、同財団が開発する一連のプロダクト群を、高速レイヤー1ブロックチェーン「Avalanche(アバランチ)」上で展開すると発表した。これにより、カウ・ダオが誇るDEXアグリゲーター「CoW Swap(カウ・スワップ)」や、基盤プロトコルである「CoW Protocol(カウ・プロトコル)」が、アバランチエコシステムに初めて導入される。これは、Ethereum(イーサリアム)やGnosis Chain(グノーシスチェーン)などで実績を積んできた同プロジェクトにとって、新たなフロンティアへの挑戦だ。

まず、先陣を切ってローンチされたのは「カウ・スワップ」である。この導入はアバランチのユーザーにとって、大きな利点となる。なぜなら、取引手数料(ガス代)が不要で、かつMEVと呼ばれる悪質なボットによる価格操作から完全に保護された取引環境が、初めて提供されるからだ。これまでイーサリアムメインネットでカウ・スワップの恩恵を受けてきたトレーダーは、使い慣れたインターフェースからボタン一つでアバランチネットワークへ切り替えられる。わざわざ他のプラットフォームへ移動する必要はない。

では、カウ・スワップの取引はなぜ有利なのか? その秘密は「Intent-based(インテントベース)」という取引モデルと、「Solver(ソルバー)」と呼ばれる執行者の存在にある。ユーザーは「このトークンを、あのトークンに交換したい」という「意図」を表明するだけでよい。すると、複数のソルバーが、Uniswap(ユニスワップ)などの自動マーケットメーカー(AMM)や、1inch(ワンインチ)のようなDEXアグリゲーター、さらにはプライベートなマーケットメイカーに至るまで、あらゆる流動性ソースを探索し、ユーザーにとって最も有利な取引経路を見つけ出す。いわば、アグリゲーターをさらに束ねる「メタDEXアグリゲーター」だ。

そもそも中核概念のCoWとは何なのか? これは「Coincidence of Wants(コインシデンス・オブ・ウォンツ、欲求の一致)」という仕組みだ。あるトークンを売りたいユーザーと、それを買いたいユーザーの注文を直接マッチングさせることで、AMMなどを介さずに取引を成立させる。結果として、中間マージンの影響を軽減し、市場価格よりも有利なレートが実現する。

機能は単純なトークン交換にとどまらない。市場価格で即時売買する「マーケット注文」や、希望価格を指定する「リミット注文」は当然のこと、一定期間にわたって取引を分割実行する「TWAP注文」や、特定のオンチェーン条件が満たされた際に自動で執行される「プログラム注文」など、プロのトレーダーが要求する高度な注文方法にも対応している。

このCoWプロトコルは、すでに百戦錬磨の実績を持つ。サービス開始からの累計取引高は1,000億ドルを突破。とりわけ2025年6月には、イーサリアム上で他のすべてのインテントベース取引プラットフォームの合計を上回る出来高を記録したという。その信頼性と性能の高さが、あらゆるチェーンのDEXの中で最も高いユーザー定着率を誇る理由だ。

今回のアバランチへの展開は、開発者にとっても大きな意味を持っている。カウ・プロトコルのAPIが公開されることで、アバランチ上のDeFi開発者は、MEV耐性を備えた堅牢な取引インフラを自らのアプリケーションに容易に組み込めるようになる。

将来的には、独自のAMMである「CoW AMM」のアバランチへの導入も視野に入れているという。これは、複数のトークンを一つのプールで扱える、いわば「DeFi版ETF」のようなプロダクトであり、投資家にとって新たな選択肢となる可能性を秘めている。

カウ・プロトコルのアバランチ参入は、単なる一つのプロジェクトのローンチではない。それは、より安全で公正な取引環境を求めるユーザーの切なる叫びだ。アバランチエコシステム全体の成熟度を一段と引き上げる、重要な一歩となるだろう。

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
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