Alteryaを買収、急成長する仮想通貨詐欺検出AI市場
ブロックチェーン分析サービスの「Chainalysis(チェイナリシス)」は13日、AIによる詐欺検出ソリューションを提供するイスラエルのスタートアップ「Alterya(アルテリヤ)」を約1億5000万ドルで買収したことを発表した。
近年、KYC(本人確認)やAML(アンチマネーロンダリング)などの規制強化と相まって、AIを活用した詐欺検出への需要は一段と高まっている。アルテリヤはオンチェーンのみならず、VenmoやZelleなどリアルタイム決済のオフチェーンデータも統合的に解析する技術を持ち、ブロックチェーンに限定されない幅広い詐欺検出能力を提供する。
チェイナリシスは従来、ブロックチェーン上の取引を分析し、不正取引やマネーロンダリングの追跡を行う企業として知られてきた。政府機関や捜査当局に向けたレポート提供でその地位を確立してきたが、暗号資産のエコ的拡大に伴い、詐欺行為をより早期に検知し、未然に防ぎたいというニーズが高まっている。そこで、先月のWeb3セキュリティ企業「ヘクサベート(Hexagate)」買収に続いてアルテリヤを取り込むことで、チェイナリシスは「予防」「発見」「解析」のすべてを網羅する総合プラットフォームの構築を一段と加速させる構えである。
買収されたアルテリヤは、2024年に約100億ドル規模の詐欺を検出した実績を持ち、AIアルゴリズムの高い精度が注目されている。また、詐欺関連の紛争を60%削減し、Coinbase、Binance、Block(旧Square)などの大手企業とも提携している。こうした実績は、チェイナリシスにとって大きなアドバンテージとなる。リアルタイムで詐欺行為を検知・防止できる点が評価され、チェイナリシスの顧客基盤拡大にも寄与するとみられる。
今回の買収は、業界全体に対しても大きなインパクトを与えている。詐欺検出AI業界では、今後さらなる買収合戦が起こる可能性が高い。リアルタイム決済の普及が進むなか、詐欺を放置すれば顧客の信頼を大きく損ねるリスクがある。各社は対策を急務としており、チェイナリシスによるアルテリヤの取り込みは、この分野における競争を一段と激化させる要因になるだろう。
チェイナリシスは今回の買収を通じて、従来のモニタリング主体のサービスから、不正行為を事前にブロックする「未然防止ソリューション企業」へと発展させる意図が如実にうかがえる。政府機関やフィンテック企業、取引所といった幅広い顧客層に対して包括的な「トータルリスクマネジメント」を提供し、「チェイナリシスのしくみが導入されているなら安心だ」という評価を得るのが狙いだろう。将来的には信用スコアリングや保険サービスとの連携など、さらなる拡張の可能性も示唆される。
金融や暗号資産の世界は透明性が高まりつつあるものの、詐欺の手口も多様化・巧妙化している。生成AIの進歩により、不正なコンテンツや偽アカウントを容易に作成できる時代に突入したことも大きい。ブロックチェーン分析ではリーティングカンパニーであるチェイナリシスが、アルテリヤのAI詐欺検出機能を統合することで、未然に詐欺を防ぐ包括的なプラットフォームの確立に近づく。投資家や企業にとって、安全性を担保するソリューションは資金や信頼に直結する要素であるため、同社への注目度はさらに高まるであろう。
今回のアルテリヤ買収は、チェイナリシスが業界を牽引する企業として、攻守両面を強化する重要な一手となった。今後、同社の動向は暗号資産市場だけでなく、広範なフィンテック領域においても注目度を増していくことは間違いない。