今週・来週が資金凍結の正念場、取引所やOTC取引への流入に警戒
大手暗号資産(仮想通貨)取引所「Bybit(バイビット)」のCEOであるBen Zhou(ベン・チョウ)氏は4日、自身のX(旧Twitter)を通じて、ハッキングによる資金流出の現状について報告した。報告によると、ハッキングされた資金の総額約14億ドル(約50万ETH、約2,073億円相当)のうち77%は依然として追跡可能であるが、20%は追跡困難な状況にあるという。また、3%の資産については凍結に成功しているとした。
ベン氏の報告によると、流出した資金の約83%(417,348 ETH、約10億ドル、約1,481億円相当)がすでにビットコインに換金されたという。この換金には6,954のウォレットが使用されており、各ウォレットの平均保有量は1.71 BTCとなっている。
また、ハッカーは主に分散型クロスチェーン取引プロトコル「THORChain(ソーチェーン)」を利用してイーサリアムからビットコインへの換金をおこなった。具体的には、全体の72%に相当する361,255 ETH(約9億ドル、約1,333億円)がソーチェーン経由で換金されており、現在もその資金の追跡が可能である。一方で、約16%に相当する79,655 ETHは、特定の取引所「ExCH」を通じて追跡不能な状態になっており、さらなる情報の更新を待っている状況だ。
さらに、8%にあたる40,233 ETH(約1億ドル、約148億円相当)は、OKXのWeb3プロキシを通じて換金された。このうち16,680 ETHは追跡可能だが、23,553 ETH(約6,500万ドル、約96億円相当)については現在のところ追跡が難しく、OKXのWeb3ウォレットからの情報提供が求められている。
資金の回収に向けた取り組みも進められており、これまでに11の関係者が資金凍結に協力したという。その中でも特に大きな貢献を果たしたのは、Mantle(マントル)、Paraswap(パラスワップ)、ZachXBT(ザックエックスビーティー)の3者である。
また、バイビットは協力者への報酬として、合計約217万USDT(約3.2億円)を11名の「バウンティハンター」に支払ったと発表した。バウンティハンターとは、ハッキングされた資金の追跡や情報提供を行うホワイトハッカーや調査機関のことを指す。
ベン氏は今回の報告の中で、「今週と来週は、取引所、OTC、P2Pで資金が清算され始めるため、資金凍結にとって非常に重要」と述べており、流出資金がさらに拡散する前に、迅速な対応を取る必要があることを強調した。
今回のハッキング事件は、仮想通貨業界におけるセキュリティ対策の重要性を改めて浮き彫りにした。特に、分散型取引プロトコルを通じた資金洗浄の問題や、追跡不能な状態に陥るリスクについての議論が高まることが予想される。バイビットは今後も関係各所と連携し、流出した資金の追跡と回収に向けた取り組みを進めていくとみられる。
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