スタンダートチャータードのアナリスト予測|2028年末には50万ドル到達?
スタンダード・チャータードのデジタルアセット・リサーチ部門を率いるアナリスト、ジェフリー・ケンドリック氏は14日、「近々ビットコインは10万2,500ドルを突破する」との見立てを明かした。その上で、比喩的に「ビットコインはギッフェン財だ」とも述べた。
「ビットコインはギッフェン財」というのは大胆な指摘に聞こえるが、経済学徒の立場から言わせてもらうと、結論としては「そうではない」。なぜこのような主張が生まれるのか?――「価格が上がるほどさらに買いたくなる特性がある」という点に着目し、ギッフェン財と混同されやすいからだ。
そもそもギッフェン財とは、価格が上昇しても、代替できる選択肢がないために消費が増えるという特殊な財を指す。たとえば、飢饉時のジャガイモや米など、貧困層の主食は値上がりしても他の食材に切り替える余裕がなく、むしろ腹を満たすために消費量が増えてしまう――こうした悲しい状況下で生じるのがギッフェン財である。
ビットコインの場合、価格が上がるほど「もっと欲しい」という心理が働くのは事実だが、それは「FOMO」(乗り遅れたら損するかも)や「上がっているなら今のうちに買わなければ」という投機的な思惑が絡んでいる。どちらかというと、高級ブランド品のように、価格上昇によってステータス性が増し、需要が伸びる“ヴェブレン財”に近い性質を持つ。
こうした“ギッフェン財”論とは別に、ビットコイン市場ではここ数週間、週末になるとマイナスリターンが続いていた。しかし、ケンドリック氏は「今週末(15~16日)は違う」と指摘。14日に仮想通貨メディア「The Block(ザブロック)」へ共有したメモの中で、「週末に小幅でもプラスの値動きがあれば、月曜のETF資金流入が加速し、10万ドル、さらに10万2,500ドルへの上昇につながる可能性がある」と分析した。
1月25~26日の週末は中国製AI「Deepseek(ディープシーク)」登場のニュースが市場を揺るがし、2月1~2日には米国がカナダ・メキシコに対する関税措置を発表し、市場がリスクオフに傾いた。しかし、先週はそうした悪材料が出尽くしたうえ、米10年債利回りが4.5%を下回ったこともあり、ビットコインのようなリスク資産には追い風になる可能性があるという。
ただ、実際のチャートを振り返ると、15~16日の週末に大きな上昇は見られず、むしろ95,800ドル付近まで下落する場面があった。確かに、過去5週間のような急激な下落は避けられたものの、期待された「週末の反発」は実現しなかった。ただし、ケンドリック氏の予測では、仮に週末に大きな上昇がなくても、ETF資金流入が週明けの価格上昇を促す可能性がある。短期的な値動きを読む難しさは改めて浮き彫りになったが、今後の動向にも注目が集まる。
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ケンドリック氏は、これまでも強気な長期予測を示してきた。彼は今月、「投資家のアクセスが拡大し、ボラティリティ低下が進めば、ビットコインは2028年までに50万ドルに達する」と発言している。さらに、彼のシナリオでは、2025年末には20万ドル、2026年末には30万ドル、2027年末には40万ドル、そして2028年末には50万ドルに到達し、2029年末までその水準を維持する、と見ている。
ケンドリック氏の「ビットコインはギッフェン財」発言は、半分ジョークのようなものだろう。価格が跳ね上がる局面ではバブルが色濃くなるのが常だが、それを理解したうえで投資なのか投機なのかを冷静に判断するべきである。レアケースの経済学理論に安易に頼るより、実際の需給要因や市場の心理を冷静に見るほうが健全だといえよう。
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