表記のわかりにくさを解消する狙い
ビットコインの基本的な単位表記に関して、その最小単位の扱いを根本から見直す提案「BIP-0177」が4月にコミュニティに提示され、議論されている。簡単に言えば、この提案は「現在ビットコインの最小単位として使われている『1 satoshi』の呼び名を、今後は『1 bitcoin』に変更しましょう」という内容だ。この提案に従えば、現在「1 bitcoin」と呼ばれている量(一般的に「1 BTC」と表現される量)は「1億bitcoin」ということになる。この変更を通じて、ビットコインをもっと使いやすく、そして理解しやすくすることを目指している。
ビットコイン改善提案「BIP」とは
まず、この提案が記載されている「BIP」について説明する。「BIP」とは「Bitcoin Improvement Proposal(ビットコイン改善提案)」の略称で、ビットコインプロトコルの変更や、情報提供、プロセス改善などを目的とした設計文書の草案群である。
BIPは、ビットコインコミュニティの誰でも作成・提案でき、議論、レビュー、テストを経て、コンセンサスが得られればビットコインの仕様として採用されることがある。つまり、BIPはビットコインが分散型で進化していくための重要な仕組みの一つだ。
BIP-0177:「bitcoin」を最小単位として再定義する提案
BIP-0177は、「bitcoin」という単位の定義を根本的に変更し、ビットコインの表示方法とユーザーの認識をプロトコルの実態に近づけることを目指す提案である。
主な仕様変更点:
- 現在「1 satoshi」と表現されている最小単位そのものを「1 bitcoin」と再定義する
- 内部的な最小単位の扱いに変更はない
- 「satoshi」や「sat」といった非公式な用語は、このBIPの目指す単一単位「bitcoin」の概念と矛盾するため、非推奨となる
- 通貨コード「BTC」は影響を受けず、引き続き1億ベースユニットを意味する
この変更により、小数点以下の扱いに伴う潜在的な混乱やユーザーエラーを減らし、新規参入者がビットコインの性質を誤解するのを防ぐのが目的とされている。
なお、現在ビットコインコミュニティでは、ビットコインの最小単位「satoshi」の呼称を正式に標準化しようとする別の提案(BIP-172)や、100 satoshiを「bit」とする案(BIP-176)なども示されている。
この提案は、ビットコインがより多くの人々に日常的に使われるようになる将来を見据え、「単位の分かりにくさ」という根本的な課題に対処しようとする提案である。現時点ではあくまで「提案」段階であり、ビットコインの仕様として採用されるかどうかは、今後の議論とコンセンサス形成にかかっているが、ビットコインの長期的なユーザビリティ向上に貢献するかもしれない重要な試みとも言えるだろう。
関連:ビットコイン、週足終値で史上最高値更新──5月第2週に106,466ドル記録
関連:サトシ・ナカモトの正体、米政府は知っている? 弁護士が情報開示を請求