ブロックチェーン分析企業「Chainalysis(チェイナリシス)」は2日、第6回「2025年世界暗号資産(仮想通貨)採用指数」を発表した。インドが3年連続で総合1位を維持し、APAC(アジア太平洋)地域が前年比69%の驚異的な成長を記録するなど、世界的な暗号資産採用の加速が鮮明となった。151か国を対象とした今回の調査では、暗号資産が投機的投資から実用的金融インフラへと進化していることが浮き彫りになった。
インドが全指標で首位、米国2位浮上でビットコインETF効果が鮮明に

インドは個人向け中央集権型サービス、中央集権型サービス全体、DeFiプロトコル、機関投資家向け中央集権型サービスの全4つのサブ指数でトップを獲得し、圧倒的な強さを見せた。特に注目されるのは米国で、2024年に承認されたビットコイン現物ETFや規制環境の明確化を背景に機関投資家の参入が加速し、2位にランクアップした点だ。

上位10か国は以下の通り:1位インド、2位米国、3位パキスタン、4位ベトナム、5位ブラジル、6位ナイジェリア、7位インドネシア、8位ウクライナ、9位フィリピン、10位ロシア連邦。APAC地域とグローバルサウス諸国の存在感が際立つ結果となった。
日本は19位、機関投資家向け中央集権型サービスが低迷
日本は今回の調査で19位となった。2023年は18位だったが、2024年にはトップ20圏外に後退し、今回19位に順位を回復した形となる。
サブ指数別では、DeFi利用が16位、リテール中央集権型サービスが17位と比較的健闘している一方で、機関投資家向け中央集権型サービスは27位と大幅に低迷している。これは米国でETF承認を機に機関投資家参入が加速する中、日本では機関投資家の暗号資産投資が依然限定的であり、順位に影響したと考えられる。
APAC地域が世界最速69%成長、取引量2.36兆ドルに拡大

2024年7月から2025年6月までの12か月間で、APAC地域は暗号資産取引量が1.4兆ドルから2.36兆ドルへ69%増加し、世界最速の成長を記録した。この成長を牽引したのは、インド、ベトナム、パキスタンといった主要市場で、送金、ステーブルコインを通じたドルアクセス、モバイル中心の金融サービスなど、世界的に採用を後押しする要因がAPACでも作用した。
地域別成長率では、中南米が63%増、サブサハラアフリカが52%増と続き、グローバルサウス諸国での実用的な暗号資産活用が顕著となった。一方、北米は49%増、欧州は42%増、MENAは33%増を記録し、絶対額では北米が2.2兆ドル超、欧州が2.6兆ドル超の取引量を維持している。
人口1人当たりの暗号資産利用量で調整した場合、ウクライナが1位、モルドバが2位、ジョージアが3位と東欧諸国が上位を席巻した。経済的不確実性、伝統的金融機関への不信、高い技術リテラシーが背景にある。
ビットコインが法定通貨オンランプの主要入口、4.6兆ドル流入

ビットコインは法定通貨からの流入で4.6兆ドルを記録し、暗号資産エコシステムへの主要な入口となった。これはレイヤー1トークン(BTC・ETH除く)の約3.8兆ドルを大きく上回り、いわゆる「デジタルゴールド」としての地位を改めて確認させる結果となった。
ステーブルコインは1.3兆ドル、アルトコインは約5,400億ドルと続き、その他のカテゴリー(低流動性トークン、ミームコイン、DeFi等)はそれぞれ3,000億ドル未満の流入となった。
ステーブルコイン市場で多様化進む、EURCが月平均89%成長

ステーブルコイン市場では依然USDT(テザー)とUSDCが依然として市場を支配し続けているが、小規模ステーブルコインの急成長が注目されている。特にEURCは月平均約89%の成長率で、月間取引量が2024年6月の約4,700万ドルから2025年6月には75億ドル超へと拡大した。
この背景には、「Stripe(ストライプ)」、「Mastercard(マスターカード)」、「Visa(ビザ)」がステーブルコイン決済に対応したサービスを開始し、「Citi(シティ)」や「Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)」などの伝統的金融機関も独自のステーブルコイン発行を検討していることが挙げられる。
「PayPal(ペイパル)」のPYUSDも7億8,300万ドルから39億5,000万ドルへと大幅な成長を記録し、大手テック企業の暗号資産参入が市場の多様化を促進している。
調査方法論の刷新で実態をより正確に反映
今回の調査では、方法論が刷新された。従来のDeFiリテール向けサブ指数を除外し、より主流な利用実態を反映させるとともに、新たに「機関投資家向け中央集権型サービス」指数を新設し、100万ドル以上の大規模取引を追跡対象に加えた。
この結果、暗号資産エコシステムの機関化と成熟化が適切に評価できるようになり、世界各国での暗号資産採用の多様性と深度をより正確に測定することが可能となった。
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