世界最大のステーブルコインUSDTの発行元「Tether(テザー)」は7日、スペイン語圏の大手暗号資産(仮想通貨)取引所「Bit2Me(ビットツーミー)」の少数株主になったと発表した。同時に、テザーが主導する3,000万ユーロ(約51億円)規模の資金調達ラウンドも進行中で、数週間以内に完了する予定だという。
EU全域、およびラテンアメリカへの事業拡大を支援
この出資は、ビットツーミーの欧州連合(EU)内での事業拡大および、アルゼンチンを中心としたラテンアメリカ市場におけるプレゼンス強化を目的としている。
今回の発表は、ビットツーミーがスペインの国家証券市場委員会(CNMV)から、MiCA(欧州仮想通貨市場規則)に基づく仮想通貨サービス提供者(CASP)としての認可を取得した直後に行われたものだ。この認可により、ビットツーミーはEU加盟27カ国すべてで合法的に事業を展開できる体制を整えたことになる。
テザーのCEOであるパオロ・アルドイーノ氏は、「ビットツーミーは、規制に準拠し、安全で直感的なインフラを構築するという明確な姿勢を示してきた。教育、透明性、そしてユーザーの自立を重視する姿勢は、テザーの使命である『開かれた金融システムの実現』と深く共鳴する」と語り、今回の支援に自信を見せている。
一方、ビットツーミー共同創設者兼COOのアンドレイ・マヌエル氏は「テザーのようなグローバルリーダーが株主構造に加わることは、ビットツーミーにとって変革的な瞬間だ。彼らの支援により、分散型金融の力を解き放ち始めた欧州とラテンアメリカ市場でのリーダーシップを加速させたい」とコメントした。
ビットツーミーは2014年に設立され、現在120万人以上のユーザーと7,000社以上の企業顧客を抱える。2025年までの累計取引額は30億ユーロ(約5,142億円)を超え、スペイン語圏の仮想通貨市場において確固たる地位を築いてきた。
同社共同創設者兼CFOのパブロ・カサディオ氏は「当社の力強い成長と信頼される評判は、透明性、規制対応、顧客中心のイノベーションに対する10年以上のコミットメントの結果だ。テザーの支援により、製品、ユーザー、地理的展開においてさらに迅速な拡大が可能になる」と述べている。
テザーはオフショアを拠点とする企業として知られており、その運営透明性や規制準拠性については、過去に幾度となく国際的な議論の的となってきた。一方で、ビットツーミーはMiCAの枠組みに沿ったEU当局の認可を取得しており、厳格な規制環境下での事業運営が求められる。今回の出資により、テザーは自身の信頼性を高めつつ、規制順守型のエコシステムへの接点を拡大する狙いがあると見られる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ユーロ=171.43円)