暗号資産(仮想通貨)取引所「BitMEX(ビットメックス)」の元CEOであるアーサー・ヘイズ氏は27日、自身の公式Medium(ミディアム)を更新。同氏は新たな投稿の中で、米国の財務長官スコット・ベッセント氏によるユーロダラーの解体とグローバル・サウス(発展途上国)の資本吸収が、DeFi(分散型金融)を前例のない規模に拡大させるとの見解を示した。
ユーロダラー解体と新興国資金吸収が背景
ヘイズ氏は投稿の中で、ベッセント氏を映画「羊たちの沈黙」の登場人物になぞらえて「バッファロー・ビル」と呼称。彼の金融政策の目的が、「巨大な政府支出を賄うため、価格に無関心な米国債の買い手を見つけることだ」と指摘。その鍵となるのが、ステーブルコインであると論じている。
過去の金融危機において、米国政府は大量のドルを供給する形でユーロダラー市場を救済し続けてきたとヘイズ氏は語る。これにより、ユーロダラー市場における米国の「暗黙の救済保証」が成り立った。ユーロダラー市場の規模は現在10兆から13兆ドル(1,479兆〜1,923兆円)と試算されており、ヘイズ氏はこれらの資金が米国債の購入に活用されていない点を問題視している。
ヘイズ氏はベッセント氏が今後、ユーロダラー市場に対する暗黙の救済保証を撤回すれば、資金の安全な避難先として米国債で裏付けられたステーブルコインへの移行が促進されるだろうとみている。預金者の資金を米国債で運用しているステーブルコイン発行体は事実上、価格に無関心な米国債の買い手となる形だ。
また、グローバル・サウスの膨大な現地通貨預金もターゲットになるという。該当地域の人々は、自国通貨のインフレに苦しんでおり、安定した米ドルへのアクセスを強く求めているとヘイズ氏は語る。
ヘイズ氏は、「Meta(メタ)」傘下の「WhatsApp(ワッツアップ)」や「Instagram(インスタグラム)」といった米巨大テック企業が、グローバル・サウスの資本吸収のための「トロイの木馬」になると強調。これら企業がアプリ内にステーブルコインウォレットを組み込むことで、現地の人々に直接的なドルへのアクセスを提供できるとの見解を示した。
ユーロダラー解体とグローバル・サウスの資本吸収の動きが融合すれば、ステーブルコイン市場に34兆ドル(約5,030兆円)規模の資金が流れ込むとヘイズ氏は試算している。これら資金は単なる貯蓄にとどまらず、「使う」「貸す」「取引」という3つの行動を通じ、DeFiの活用規模を爆発的に拡大させる可能性があると同氏は付け加えた。
ヘイズ氏はDeFi市場の活性化の恩恵を受けるプロジェクトとして、「Ether.fi(イーサファイ)」や「Ethena(エセナ)」、「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」の名前を挙げている。ヘイズ氏の試算によれば、これらのプロジェクトは新たなステーブルコインの潮流により、数十倍もの成長を遂げる可能性があるという。
ヘイズ氏の描くビジョンは、ステーブルコインを基盤とする新しい金融インフラが世界中の人々に投資と自由の機会をもたらすものとなっている。来るべきDeFiの新時代の到来に、仮想通貨市場での期待感が高まりつつある。
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