バンク・オブ・アメリカ、ステーブルコイン参入を検討──仮想通貨規制の動き背景に

木本 隆義
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米主要銀行が相次いでステーブルコインに言及

米国第2位の資産規模を誇る巨大商業銀行「Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)」は現地時間16日、自社でステーブルコインを発行する計画に取り組んでいると発表した。

同計画は、決算発表後の電話会見で、ブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)が語ったもの。具体的なタイムラインこそ示されなかったものの、この巨大銀行がデジタル通貨の世界へ本格的に足を踏み入れる意思を明確にした。

この動きの背景には、米国内で暗号資産(仮想通貨)に融和的な規制が整備されつつあるという大きな潮流が存在する。「クリプトプレジデント(Crypto President) 」を自称するトランプ大統領の後押しもあり、議会ではステーブルコインの法的な枠組みを定める法案の審議が進行中だ。まさに、大手銀行が待ち望んでいた『法的な明確性』が、ようやく視界に入ってきた。事実、モイニハンCEOも、これまで投資家が期待するほど進展がなかった理由を、法的な明確性の不備に求めている。

もちろん、ステーブルコインに色気を見せているのはバンク・オブ・アメリカだけではない。むしろ、ウォール街全体が雪崩を打って動き出した観すらある。「Citigroup(シティグループ)」のジェーン・フレイザーCEOは15日、「シティ・ステーブルコインの発行を検討している」と明言。今がデジタル決済分野での好機と捉えているようだ。そして、これまで仮想通貨に批判的とされてきた「JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)」のジェイミー・ダイモンCEOでさえ、同日に詳細は伏せつつもステーブルコインへの関与を認めている。

一方で、「Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)」はもう少し慎重だ。シャロン・イェシャヤCFOは16日、動向を注視しているとしつつも、「我々の顧客基盤にとっての有用性を見極めるには、まだ少し早い」と述べ、一歩引いた姿勢を崩していない。

そもそもステーブルコインとは、米ドルのような法定通貨の価値に連動するように設計された仮想通貨の一種である。これまでは、仮想通貨のトレーダーたちが、価格変動の激しいトークン間の資金移動をスムーズに行うために利用してきた。しかし、銀行の狙いはそこだけにとどまらない。モイニハンCEOは、今回の動きを個人間送金サービス「Zelle(ゼル)」や「Venmo(ベンモ)」の導入になぞらえた。これは、銀行がステーブルコインを、単なる投機対象ではなく、次世代の決済インフラの核として見据えていることを示唆している。

もっとも、同CEOは「現時点での顧客需要はまだ高くない」とも語っており、市場の反応を慎重に図りながら、他のプレーヤーとの提携も視野に、適切なタイミングで展開する構えである。今回の動きがデジタル資産の普及を大きく前進させる一歩となるのか、それとも規制を回避する新しい金融手法にすぎないのかはまだ分からない。ウォール街で起きた変化は、金融業界の構造に影響を与える可能性を秘めている。

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
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