ステーブルコイン利回りの真実──DeFiエコシステムの成熟を示す最新データ

ヤマダケイスケ
11 Min Read
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

TVLは前年比60%増──機関投資家が注目するDeFi利回りの実態

オンチェーンデータ分析企業「Artemis(アルテミス)」は19日、DeFi(分散型金融)プラットフォーム「vaults.fyi(ヴォールツ)」と共同で、「オンチェーン利回り:データが示すもの&今後の展望」と題したレポートを公開した。同レポートでは、DeFi市場におけるステーブルコイン利回りの現状とその変化に焦点を当て、オンチェーンデータと企業分析に基づいて将来の展望を論じている。

特に注目すべきは、DeFiレンディング市場における預け入れ資産総額(TVL)の急増である。特にAave(アーべ)やMorpho(モルフォ)、Euler(オイラー)といったレンディングプロトコルは高利回りに加えて、構成可能かつ透明性の高いインフラを提供しており、従来金融にはない特徴として機関投資家から注目を集めている。

アルテミスのデータによると、2025年6月時点でDeFiレンディングプロトコルのTVLは前年比60%も増加し、600億ドル(約8.7兆円)規模に迫る水準まで膨らんでいる。これは、オンチェーン金融に対する信頼の高まりと、それに伴う個人や機関投資家の積極的な参入が加速していることを示す明確な指標と言えるだろう。

DeFiレンディングプロコトルのTVL推移
出典:Artemisレポート

上記のようなDeFi市場の主力プロトコルでは、USDC(USD Coin)の30日間貸付利回りが4〜9%と、同期間における3ヶ月米国債の利回りと同等かそれ以上の水準を維持していると強調されている。こうした実績が、従来の金融商品と比べて柔軟性と効率性に優れるDeFiの競争力を際立たせる要素であると言えるだろう。

モルフォやオイラーといった次世代プロトコルは、柔軟な設計と高度なリスク管理によって、初期DeFiの利回り基盤をさらに発展させている。異なるブロックチェーン間の相互運用性や、ユーザーインターフェースの簡素化も含め、今後の技術的進展がDeFiの信頼性や持続性をさらに高めていく可能性が考えられる。

一方で、レポートでは利回りの高さだけがDeFiプロトコル選定の基準ではない点にも言及している。ユーザー、特に機関投資家にとっては、プロトコルの信頼性や予測可能性、扱いやすさといった要素も意思決定において重要な役割を果たしているという。これまでのような過熱した投機ブームとは異なり、現在のDeFi市場はより成熟し、リスク管理や規制対応を含めた包括的なインフラ構築が進められている段階だと言えるだろう。

レポートの締めくくりでは、DeFi基盤技術が「マネーレゴ」のように組み合わさり、複雑なサービスが裏側でシームレスに統合され、ユーザーにはシンプルかつ直感的な価値提供がなされるというDeFiの未来像が示されている。今後のDeFiは高利回りの追求を超え、金融インフラとしての信頼性・透明性・持続可能性を軸により広範なユーザー層の取り込みを図っていくことになりそうだ。

関連:ビットコイン担保型ステーブルコイン「BTCD」、Elastosが発表──ラップドトークン不要のDeFi新モデル
関連:イーサリアムL2「インク財団」、新トークン「INK」発表──Aave基盤のDeFiで活用へ

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.25円)

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

Share This Article
仮想通貨やBCGをメインに執筆活動を行うWebライター。2021年、ビットコインの大幅な値上がりに興味を持ち、仮想通貨の世界に参入。Binance、Bybitをメインに現物取引やステーキングサービスを活用し、資産運用を進めている。
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA