BTCやETHなど100種類超の仮想通貨に対応
米決済大手の「PayPal(ペイパル)」は28日、新たな暗号資産(仮想通貨)決済サービス「Pay with Crypto(ペイ・ウィズ・クリプト)」の提供を米国で開始すると発表した。米国内の加盟店を対象に、100種類以上の仮想通貨と主要ウォレットに対応し、国際取引の手数料を最大90%削減できるという。
ペイ・ウィズ・クリプトは、決済時に100種類以上の仮想通貨をステーブルコインまたは法定通貨へ即時変換できるのが特徴だ。具体的には、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、テザー(USDT)、リップル(XRP)、バイナンスコイン(BNB)、ソラナ(Solana)、USDコイン(USDC)など、主要通貨に対応している。
さらに、接続可能なウォレットとしては、Coinbase(コインベース)やMetaMask(メタマスク)、Binance(バイナンス)、Kraken(クラーケン)などが対応済みで、今後の拡大も予定されている。
ペイパルは、国際的な商取引で事業者が直面する課題として、複雑な銀行手続きや高額なクロスボーダー手数料を挙げている。ペイ・ウィズ・クリプトは、これらの障壁を取り除く手段として設計されており、取引手数料を0.99%に抑えることで、従来の国際クレジットカード決済と比べて最大90%のコスト削減を可能にしている。
ペイパルCEOのアレックス・クリス氏は、「すべての規模のビジネスが、国際展開においてコスト増や統合の複雑さといった課題に直面している。ペイ・ウィズ・クリプトによって、これらの障壁を取り除き、あらゆる企業が成長の機会を得られるよう支援したい」と述べている。
同氏は、グアテマラの顧客がオクラホマ州の事業者からギフトを購入する例を挙げ、ペイパルのオープンプラットフォームを使えば、事業者は仮想通貨での支払いを受け付け、取引手数料を抑え、売上金に即時アクセスできると説明した。また、受け取った資金をペイパル上で同社のステーブルコイン「PYUSD(PayPal USD)」として保持することで、4%の利回りを得ることも可能であるという。
また、ペイパルは7月、世界大手のデジタルウォレット5社を統合したグローバルパートナーシップ「PayPal World(ペイパル・ワールド)」も発表しており、世界的な資金移動の仕組みを根本から再構築しようとしている。今回のペイ・ウィズ・クリプト導入も、その一環として位置づけられている。
ペイ・ウィズ・クリプトは仮想通貨を実用的な決済手段として広く普及させる起点になり得る。特に、中小企業にとっては国際展開に伴うコストを抑えつつ新市場への参入を加速するツールとなるだろう。今後、他国での導入状況や規制との整合性も注視すべき点であるが、仮想通貨が日常の商取引に溶け込む大きな一歩と言える。
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