レイヤー1ブロックチェーンのNEAR(ニア、
NEAR)は10日、公式Xで、公開鍵も鍵のハッシュもオンチェーンに出さずに資産を保管できるアカウントの仕組み「NEP-655」を、数週間以内にメインネットへ導入する予定だと明らかにした。テストネットではすでに稼働している。
AIによる数学の進歩で暗号資産(仮想通貨)の署名が想定より早く破られる可能性に備え、資産を新しいアドレスへ移す「バンカーモード」を、研究者が7日に業界に呼びかけた後の発表となった。
NEARのNEP-655、資産を初期状態のハッシュの裏に置く
NEARによると、NEP-655は、開発会社Near Oneのチームが開発しているアカウントの仕組みである。アカウントは初期状態のハッシュから作られ、資産はそのハッシュの裏に置かれる。
GitHubで公開されているNEP-655の文書によると、正式名は「Universal Accounts(ユニバーサル・アカウント)」。アカウントIDは「0u」で始まる54文字で、アカウントのコード、ストレージ、アクセスキーを記した初期状態をSHA3-256でハッシュ化して作る。
NEARの公式Xが引用した開発者の投稿によると、利用者はこのIDを手元で計算し、資産を送るだけでよい。初期化の前は外部からハッシュしか見えない。鍵を持たず、独自の署名方式や復旧の仕組みを組み込んだスマートコントラクトで管理することもできるという。
この開発者は、NEP-655を「ウルトラ・バンカーモード」と紹介していた。
文書は、この機能をプロトコルのバージョン87(neard 2.14)で安定化した機能として記載している。ただ、NEP-655はまだ「ドラフト」の段階で、モデレーターがレビューの段階に移し、技術レビューの担当者を推薦した状態にある。作業部会での承認は済んでいない。
NEARの量子対策、7月のML-DSA導入から段階的に
NEARは今回の投稿で、アカウントがすでに耐量子の署名方式ML-DSAに対応しており、資産の移行は必要ないとしている。NEARは7月20日、ネットワークのアップグレード2.13で、米国立標準技術研究所(NIST)が標準化したML-DSA(FIPS 204)をメインネットに導入した。
| 時期 | NEARの量子対策 |
|---|---|
| 2026年7月20日 | アップグレード2.13で、耐量子署名ML-DSAをメインネットに導入 |
| 2026年8月24日 | 量子対策のロードマップを公表。合意形成の耐量子化は2027年末までの見込み |
| 2026年10月10日 | NEP-655を数週間以内にメインネットへ導入する予定と公表 |
8月のロードマップでは、ML-DSAは合意形成に使うには計算の負担とデータの大きさが過大だとして、合意形成の耐量子化は2027年末までの完了を見込むとしていた。より小さい格子暗号のFalcon(FN-DSA)も検討しているという。
NEARは今回、NEARインテンツのウォレット・コントラクトを、ML-DSAやハッシュに基づく署名方式に拡張できるよう設計していることも明らかにした。耐量子の鍵を追加できない他のチェーンの利用者向けに、復旧用の鍵をハッシュとして登録できる「Qデーの復旧レジストリ」も作っている。
NEARが採用したML-DSAは格子暗号に基づく。イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は8日、今後2年のAIによる数学の進歩で、格子暗号の安全性も大きく損なわれる可能性があるとの見方を示していた。NEARは今回の投稿で、2018年の設計時から量子を念頭に置いていたとしている。
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