収益性低下が直撃、マイナー各社がビットコインを現金化
株式を公開している主要なビットコイン(BTC)採掘企業15社が、3月に合計で40%以上の採掘分ビットコインを売却していたことが明らかとなった。これは2024年10月以来の高水準であり、最近までの「HODL(保有)戦略」から大きく転換した動きである。16日、「The Miner Mag」が報じた。
この売却傾向の背景には、ハッシュプライス(採掘効率に対する報酬単価)の低迷と、世界的な貿易摩擦の不確実性の高まりがあると見られる。現在、ハッシュプライスはサイクルの最安値水準付近で推移しており、ブロック内の平均取引手数料はわずか1.1%にまで低下している。
こうした状況下、CleanSpark(クリーンスパーク)は16日、自社の月間BTC生産分の一部を売却し、運営コストをカバーする方針を明らかにした。また、保有するビットコインを成長戦略の資金源としても活用するとしており、マイナー各社の「蓄積から活用」へのスタンス転換が浮き彫りになった。
売却が加速したのはクリーンスパークだけにとどまらない。3月にはHIVE(ハイブ)、Bitfarms(ビットファームズ)、Ionic Digital(アイオニック・デジタル)の3社が、それぞれの月間生産量を上回る量のビットコインを売却していたことも報告されている。これは、企業が保有資産を切り崩して流動性を確保しようとしている証左とも言える。
一方で、情報の透明性に課題もある。Bit Digital(ビットデジタル)、Argo(アルゴ)、Terawulf(テラウルフ)、Stronghold(ストロングホールド)の4社は2025年1月以降、月次レポートの公開を停止しており、Core Scientific(コアサイエンティフィック)に至っては2月以降、保有BTCの開示すら行っていない。そのため、3月の実際の売却総量は、公表されているデータよりも多かった可能性がある。
さらに、半減期後の新たな採掘環境に適応するため、マイニング業界ではインフラ拡張やASIC機器のアップグレード、高性能コンピューティング事業への多角化といった資本支出の増加も見られる。こうした中で、BTC売却は企業活動を維持・成長させるための現実的な選択肢となっているのが実情だ。
マイニング企業によるビットコインの戦略的売却は、短期的には価格の下押し圧力となり得るが、事業の持続可能性や技術革新を進めるための資金確保としては合理的な判断でもある。今後もハッシュプライスや取引手数料の動向、ならびに各社の資本政策が市場に与える影響を注視する必要がある。
関連:トランプ一家、ビットコインマイニング参入──Hut 8と「American Bitcoin」を共同設立
関連:マイニング機器メーカー「カナン」、24年Q4のマイニング収益は前年比312%増