チリーズ、米国市場に本格再進出──SECとファントークンの規制明確化で協議開始

伊藤 将史
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画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

2026年ワールドカップを視野に大型投資も計画

スポーツ・エンターテイメント分野に特化したブロックチェーンプロジェクト「Chiliz(チリーズ)」が、米国市場への再参入を目指し、米証券取引委員会(SEC)の「Crypto Assets and Cyber Unit(仮想通貨およびサイバー部門)」との協議を実施したことが、22日付で公表されたミーティング・メモにより明らかとなった​

チリーズは、同社が展開するファンエンゲージメント・プラットフォーム「Socios.com(ソシオスドットコム)」を通じて、「ファントークン」を発行・提供している企業である。ファントークンとは、保有することでチームの投票イベントへの参加権や限定グッズ・体験へのアクセス権などが得られるトークン(仮想通貨)のことだ。同社は既に、「FCバルセロナ」「パリ・サンジェルマン」「ACミラン」「アーセナル」など、世界80以上の主要スポーツ組織とパートナーシップを結んでファントークンを発行している。

協議には、チリーズCEOのアレックス・ドレイファス氏をはじめ、仮想通貨業界団体「The Digital Chamber(デジタル・チェンバー)」CEOのコディ・カルボーネ氏、法律事務所「Zuber Lawler LLP(ズーバー・ローラー法律事務所)」パートナーのジョシュ・ローラー氏が参加。チリーズ側は、ファントークンが米国証券法上の「証券」に該当しないとする立場から、SECに対して「ノーアクションレター(No-Action Letter)」の発行を正式に求めたという。

ノーアクションレターとは、SECがある行為に対して現時点で強制措置を取らない意向を示すもので、規制上のリスク回避や事業展開の予見性確保の手段として用いられる。今回の要請により、チリーズは米国内での法的リスクを低減させたうえで、ファントークンの展開を再開することを狙っているとみられる。

米国市場での経緯と再参入計画

チリーズは2021年に、米国のプロスポーツチーム(NBA:27チーム、NFL:13チーム)とのパートナーシップ構築に8,000万ドルを投じるなど、米国市場への進出を図った。しかし、ファントークンに対する米国内での規制の不確実性が障壁となり、実際のトークン発行には至らず、2022年のFTX破綻などを背景とした市場環境の変化を受け、米市場での活動を一時中断していた。

今回の協議を通じ、同社は再び米国での展開を本格化させようとしており、2026年FIFAワールドカップ(北中米開催)を見据えて、5,000万〜1億ドル規模の米国市場への再投資を検討していることも明らかにした。

SECの対応次第では、ファントークンの取り扱いに関する前例となる可能性があり、米国での仮想通貨やNFTの規制環境にも広範な影響を及ぼすと考えられる。今後、SECがチリーズのノーアクション要請にどう対応するかに、業界内外の注目が集まっている。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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