L2競争時代における差別化戦略
分散型取引所(DEX)「Bunni(ブンニ)」は1日、V2をマルチチェーンでローンチした。
ブンニは、「Uniswap v4」で導入されたHooks(フック)機能などを全面的に活用し、高度な流動性提供を可能にした新型DEX。このV2では、Ethereum(イーサリアム)メインネットに加え、Arbitrum(アービトラム)やBase(ベース)にも展開される。
DeFi市場には、高速かつ安価なレイヤー2を好む層と、メインネットのセキュリティや信頼性を重視する層が並存している。そのため、マルチチェーン対応を一挙に進めたことが大きなインパクトをもたらしている。
- Hooksを徹底活用
価格帯別の流動性配置や自動的なレンジ移動といった高度な設定が可能になった。たとえば、「Any-shape Liquidity」や「Shapeshifting Liquidity」といった機能により、LP(流動性提供者)が自身のポジションを細かく制御できる。 - 余剰資産の再投資
「リハイポテケーション(再担保化)」と呼ばれるしくみにより、プール内で使われていない資産をAave(アーヴェ)やYearn(ヤーン)などのレンディングプラットフォームに回し、追加利回りを得ることが可能だ。LPはこの二重の収益機会により、利益の最大化を狙える。 - 手数料のダイナミックプライシング
市場ボラティリティに応じて手数料を調整し、LPのリスクを抑える機能を搭載。急変動時のLP損失を緩和するほか、MEV(マイナー抽出可能価値)対策も組み込まれており、細やかな設計が際立つ。 - LPポジションのERC-20化
ブンニは、Uniswap v3のようにNFTでLPポジションを表現するのではなく、ERC-20トークンとして扱う方式を採用。これにより、運用の効率化やコンポーザブル性(他プロトコルとの組み合わせのしやすさ)が向上している。
代表的なチェーンの特徴は以下のとおり。
- イーサリアムメインネット
DeFi資金が集積する主要ネットワークである反面、ガス代が高い。ただし、大口の投資家には流動性の深さやセキュリティの高さが魅力となる。「大きな資金はメインネットに集まる」という市場傾向を踏まえ、ブンニはこの層の取り込みを狙っていると考えられる。 - アービトラム
ガスの安さや高速性、活発なDeFiコミュニティが特徴である。ブンニはV1の時点からアービトラムでの運用を行っていたが、V2でさらに機能を強化。ブリッジ機能などUXの向上により、新たな資金流入が期待される。また、ブンニはアービトラムの長期インセンティブプログラム(LTIPP)に応募しており、流動性提供の強化を進めている。 - ベース
「Coinbase(コインベース)」が展開する新興レイヤー2で、急速にユーザーを獲得中。ブンニがベースにいち早く対応するのは、先行者メリットを狙った戦略と考えられる。安価なガス環境を武器に、新たなLPやトレーダーの流入が期待できる。
ブンニのガバナンストークン「LIT」は、V2ローンチ後に取引高が一時的に増加したものの、価格は乱高下した。LITはLP報酬として配分されるほか、veLIT方式によるガバナンス参加が可能となる。トークン価値が今後上昇し続けるかどうかは、実需や利用価値に依存すると考えられる。
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レンジ調整の自動化や遊休資産の再投資機能が進化すれば、LPのリターンが向上し、資金流入の促進につながる可能性がある。各チェーンのインセンティブプログラムも後押しし、TVL(Total Value Locked)の増加が期待される。ただし、Uniswap v4のフックを活用した類似のDEXが複数登場しているため、ブンニがどのように差別化を図るかが鍵となる。
L2が乱立する昨今、ブンニのマルチチェーン戦略は正しいとみる。各チェーンのコミュニティやインセンティブを取り込みながら、ブンニブランドを確立できるかが成否を左右するだろう。