「ビットコインジーザス」として知られる投資家ロジャー・バー氏が、米連邦検察との間で長らく続いていた刑事脱税事件において、暫定的な不起訴合意に達したことが明らかになった。9日、「The New York Times(ザ・ニューヨークタイムズ)」が報じている。
脱税額と同額相当の支払いで和解に応じる見通し
バー氏は2024年4月、暗号資産(仮想通貨)に関連する約4,800万ドル(約73億円)の納税を怠ったとして、詐欺および脱税の罪で起訴されていた。関係者によれば、今回の合意によってバー氏は脱税額と同額相当を米政府に支払うことで和解に応じる見通しであるという。合意条件をすべて履行した場合、最終的に起訴は取り下げられることになるとザ・ニューヨークタイムズは伝えている。
同紙は、この合意がトランプ政権による暗号資産業界への規制緩和政策の一例となる見込みだと報じた。トランプ政権下ではこれまで、米証券取引委員会(SEC)による暗号資産取引所「Coinbase(コインベース)」への訴訟取り下げや、暗号資産関連の犯罪で有罪となった著名人への恩赦などが行われている。バー氏もこうした政治的流れを意識し、トランプ米大統領への接近を試みていたと同紙は指摘している。
報道によれば、バー氏はトランプ米大統領の側近であるロジャー・ストーン氏に対し、約60万ドル(約9,180万円)を支払い、事件の核心である暗号資産関連の税規定撤廃を働きかけていたという。また、トランプ大統領の弾劾裁判を担当したデビッド・ショーン氏らを弁護士として起用するなど、法的対応を強化していたことも明らかにされている。
バー氏本人および米司法省の広報担当者はいずれも、今回の不起訴合意に関する公式なコメントを控えている。事件の最終的な決着にはなお時間を要する可能性があるが、今後の正式な合意成立の行方と暗号資産業界への法的・政治的影響にさらなる注目が集まりそうだ。
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